アメリカ暮らし
長年勤めた放送局を退職する日、思いがけず懐かしい先輩に会った。Kさんは優秀なディレクターで(わたしの2倍は頭の切れる秀才)、そのうえ能力があるくせに人格もすぐれているという、局内では珍しい尊敬すべき人物だった。 Kさんは若いころ同じ部屋で働…
庭のバナナのうち、いちばん日当たりよくてずっしり実ったやつが食べごろを迎えた。 庭師Tさんが頃合いを見計らって収穫してくれた実は、ぷんぷく膨れていい感じ。 だけど農園じゃなく単なる庭のバナナだから美味しいかどうか・・・ と少し疑っていたのだが…
航空便がアンカレッジ空港にあることを確認した翌朝、荷物は関空に来ていた。 おおー日本経由だったか!と嬉しかったのは、おそらく日本の空港であれば貨物がひどい扱いを受けないだろうから。過去にはズタボロになって届いた箱がある。角は大きく凹み、蓋は…
ワシントン・ダレス発のカタール航空機は定刻から45分遅れで出発し、ペニーは大変まずい状況におちいった。この遅れにより経由地ドーハでのトランジットが、予定の3時間15分から2時間半に縮んだからである。 カタール航空は、トランジットが3時間以上…
ワシントン・ダレス空港。ペニーがチャンスを引き寄せたのか、土砂降りが突然止んだ。 さっそく緑地に出て、チェックインまでのわずかな間にトイレを済ませる。ちゃんとしっかり出してくれて1号うれしかったよおぉ。これから長旅だもん。 カタール航空のカ…
出発を2日後にひかえ、ペニーの渡航準備がまだ終わっていない。 まず第一に気がかりだったのは、アメリカ農務省からもらうペニーの健康証明書で、その申請は獣医の予防接種証明書・健康診断書などを提出してとっくに済ませている。証明書が送られてくるのが…
嫌な話を耳にした(噂というのは次々に悲観的な要素が盛り込まれるものだから、以下の内容は眉唾ものとご理解いただきたく)。 アメリカ政府がイヌの入国の門戸を狭めようとしているようだ。日英豪など狂犬病のない地域やヨーロッパからの入国手続きはこれま…
歩道に陣取る物貰いさんについて書くと、どんだけヤヴァイところ?と思われるかもしれないが、ここはごくまともな地域である。一番多いのがジョージワシントン大学のビル(たとえばうちの真向いは理工学部)で、そのほかオフィスビルやマンションなどが立ち…
自覚してなかったけど両手を握り締めるヘタレな吾輩。 1回目の注射からちょうど2ヶ月が経った帯状疱疹の予防接種。2回目は副反応が軽くて済むのかと内心期待していたところ「おんなじだよー」と言われて凹みながらのお仕置き。 針の痛みが前回の8割ほど…
ペニーをキャビン同伴できなくなった経緯について。 いくつかの航空会社が候補にあがった。 A社:インキャビンOK、乗り換え1回。ずいぶん早いうちに座席が売り切れていた。 B社:インキャビンOK、乗り換え2回。ただしアメリカの航空会社(またはコー…
洗車機から白い泡が降り注ぎ、それが流されたと思ったら今度は紫色の泡が降ってきた。おそらくこれはワックスだろう。長ければこれから半年のあいだ日晒しにされる車体を少しでも守ってくれればいいのだが。 引越し先に持って行くクルマをどうするのか、現地…
アパートが完全に空っぽになり、寝具もないところでは過ごせないので家具付きアパートに移った。場所はワシントンDCのフォギーボトムという地区で、大学やオフィスビルがひしめき合うエリート臭ぷんぷんの街。 残念なことにわたしたちが入った部屋には駐車…
すべての荷物の運び出しが終わり、部屋が完全に空になった。一年前、日当たりと開放的な間取りに惚れ込んで選んだ部屋も、家具を入れれば狭くなるばかりだったが、あらためて空っぽになるとこんなに広かったんやねえ(引越しあるある)。 退出直前、ガラス窓…
たった1年だったけど住み慣れた場所での朝散歩はこれで終わり。 なんでかってーと主要な引越し荷物が送り出されたあと、まだまだブツが残っておりましての、それらはアメリカの倉庫で保管されますのじゃ。というわけで、今夜からは別のところに移って出国ま…
1時間かけて義両親宅を訪ねた。わたしたちはふたりとも本調子ではなく、明日の倉庫への送り出しに向けて作業が山ほどあってギリギリなんだけど、気合を入れて出かけた。これから3年の任期のうちにアメリカへ戻ってこられるかどうかハナハダあやしいという…
パックアウトが終わって気が楽になったせいか、妻が「ペニーと寝るの」と言いだした。ペニーが来てから3年、いくつかの理由により人間のベッドには上げたことがなかったんだけど、ちょっとだけやってみるかという話になった。 引越し時の「つなぎ」で使って…
荷物のパックアウトは無事終了。人生で二十数回目の引越しは、足場の悪い現場でそれなりに準備できたと思っているし、引越し屋さんも頑張ってくれて、8時間で済ますことができた。梱包が異様に手厚い海外引っ越しとしては上出来。 4人の巨大な引越し屋さん…
日本から戻って3日で引越しってのは結果的には無茶スケジュールやった。わたしたち自身の出発が2週間後に迫ってるというのに、ペニーをすんなり連れて行けるのかどうかがいつまでたっても判明せず、妻は日本にいるときから夜昼かまわず500ヶ所の相手先…
日本に滞在中、知らないところから電話がかかってきて、わたしに防犯カメラをプレゼントするという。 いや待て話をはしょり過ぎた。カメラの件はもちょっと後の話で、本題はわたしが開業予定の民泊を無料で紹介する件だった。「開店ポータル」という、全国で…
バージニアの大地が迫ってきて、機は無事にダレス空港に着陸。ちなみにNH102 便の機長さん、完璧ランディング。 空港からまっすぐペニーの預け先へ。 シッターさんに連れられて出てきたペニーは最初「???」な顔。 オイ忘れたんかーい?!な展開になりかけ…
焚火の家(笑)のほか、東京へ来るたびなるべく顔を出すようにしている家がもうひとつあり、コロナをはさんで4~5年ぶりにお邪魔した。 なごやかに食事が始まりしばらくして、驚きの事実を耳にした。その家のお嬢さんは高校一年の年齢になったのだが、小学…
1000円カットの床屋(実際は何度かの値上げを経て1350円)へ行って30分節約した。普通の床屋の1/3ほどの時間で済むからだ。実は3週間ほど前に妻に切ってもらったばかりで、髪はかなり短いんだが、プロのハサミで整えてもらうと次に切るとき助…
わんこのユキちゃんに会うため都内の某住宅街へ出かけた。 推定14歳(保護犬)ほどになったが、まだまだ元気。朝起きると後肢を少し引きずるが(寝相の問題だろうか)、すぐに正常にもどって元気に駆け回るという。よかったねえ、いい子だねえ。 だがユキ…
モノのわかりが遅い自分が、はたと膝を打って気づいたことがある。それは死の恐怖について。 昔から思ってたんだよね、年寄ってのは死が目の前に迫ってきて恐ろしくないのかと。70歳はまだしも80歳を越えてくると、一般論として余命は数年。そのことを当…
日本へ来て1週間目の火曜は、初めての快晴。東京ではネズミーランドのアトラクションが猛暑のため一部中止になったと聞くほか、日本列島は高気圧に覆われてぜんたいに夏日だったのか(ニュースちゃんと見てないのでよくわからない)。 わたしたちはここまで…
いやしくも観光業をこころざす者、お客さんに内容の濃い観光情報を提供することで、地域での滞在を楽しんでもらうべし・・・ なーんて殊勝な気持ちでハンドルを握って30分、マイカーのお客さんだったら行動半径に入りそうな隠れた名所に到着した。 睡蓮は…
心臓が止まるようなメールがアパート管理会社から来た。うちの下の部屋で水漏れがあったという。原因として最初に疑われるのは、いうまでもなく我が家。 うっ、嘘やろ?! 閉めてきたきたはずの蛇口から轟々と流れ落ちる水。浴室から寝室へと流れ、床に並べ…
藤の花に囲まれたリビングルームの窓は南向き。花が終わったあと繁茂してきた若葉が、適度な日陰をつくってくれる。 隣地が駐車場なので1階からの景色はお世辞にもセクシーとはいえないが、この緑のおかげで気持ちよく過ごすことができる。 庭木たちもパワ…
ふつう一時帰国といえば荷物は少ない。季節にもよるが、往きはスーツケース半分ほどで身軽に。帰りは食品などを詰め込み、それ以上に買い物をしたときは布製バッグを使用(アメリカ航路はスーツケース2個無料なので有難い)。 だが今回は往きの手荷物重量が…
引越し準備を中断して一時帰国ぅ。 離陸後シートベルトサインが消えた途端、すげえものを見てしまった。ひとりの女性がすっと立ち上がりCAさんを呼んだかと思ったら、おもむろにカップ辛ラーメンLサイズを取り出し、 「コレニお湯イレテクダサイ」 おそら…