ワシントン・ダレス発のカタール航空機は定刻から45分遅れで出発し、ペニーは大変まずい状況におちいった。この遅れにより経由地ドーハでのトランジットが、予定の3時間15分から2時間半に縮んだからである。
カタール航空は、トランジットが3時間以上あるときはトイレやエサの世話をするが、それ以下のときは保証できないといっている。今回のように2時間半の場合はまったく望みがないのか。あきらめの悪いわたしたちは、現場の判断でささっと済ませてくれることに期待してしまう。国際標準はそうじゃないと承知していても。
じりじりとした思いで到着したドーハは気温37度、むせかえるような湿気だった。
この環境下、ペニーのクレートが屋外に放置されたらいったいどうなることか。空調のきいた室内にさっさと退避させ、次便への積み込みまで安全に過ごしてほしい。だがその前に、すでに20時間ちかくトイレをしていないペニーがわずか2分でいいから散歩させてもらえないか。足掻くような思いでカタール航空の職員に問い合わせてみたが、結果は「確認できません」のひとこと。それでも次便への積み込みが完了ことを確認できたことは有難かった。
トイレだけのことだったらそこまで心配しないが、クレートに仕込んだ飲み水が振動でこぼれてしまいペニーが脱水症状を起こしていないか、未体験のストレスでおかしなことになってはいないかと、悪い想像をしかけたらキリがない。
このようにして次の経由地バンコクまで飛ぶことになったペニーだが、またひとつの困難が発生した。カタール航空、またしても遅延。バンコク行きは30分遅れた。30分なんて、普段の旅行だったら気にも留めない微細な誤差だが、今回はペニーのトイレがそれだけ遠のくわけで、気が気じゃない。
ダレス空港で預けてから28時間後、バンコク・スワンナプーム空港着。ようやく再会したペニーは、見たところ元気だった。千切れるほど尻尾を振り、ヒーンヒーンと悲鳴のような声をあげながらしがみついてくる。ごめんなごめんな、でも嬉しいよ、嬉しいよ・・・体を撫でさするとうっすらオシッコのにおいがしたのは、我慢しきれず僅かに漏らしたからかも。我慢なんかせずちゃーっとしてしまえばいいのにと思うのだが、そうもいかずに苦しんだわけで。ほんとに申し訳なかった。
知らない人に吠えがちなペニーをうまく手なずけ、リードをつけて散歩してほしいと用意したおやつは手つかずで、やはりドーハでは世話をしてもらえなかったのだろう。ベストを尽くしても叶わぬことはある。そもそもカタール航空の「3時間ルール」を考えれば、もっとトランジットが長い乗り継ぎにすべきなんだけど、公費の旅行には制限が多く、今回はこれ以外に選択肢がなかった。つらいもんだね。
ただ、ペニーが元気なのには救われた。背中の肉をつまむとプルンと元に戻り、脱水症状はなさそう。性格によっては飼い主との分離不安や異様な環境下でのストレスで最悪のばあい突然死する子もいるようだが、ペニーの場合、持ち前の鈍感力(暗くなればコテンと眠ってしまうような)のおかげで無事に切り抜けられたのではないか。
タイへ一時入国手続きを済ましたら、すぐにトイレ!事前リサーチでは「スワンナプーム空港には緑地がない」とのことだったが、実際には空港ビルを出て道路を渡ればそこそこの芝生があり、ペニーは存分に済ますことができた。
ちなみにペット輸出入の業者さんからのアドバイスにより、飛行6時間前以降はエサを与えてなかったので、ペニーはお腹ペッコペコ。可愛そうなのでバンコクで食事してほしかったが、もうひとつ最終目的地へのフライトがあったので、丁寧に詫びを申し述べて我慢していただいた。その代わり、大好きなチュールをプレゼント。
このあともうひと頑張りしてもらい、最後の1時間フライトで旅は終わった。空港から「自宅」に直行し、荷を解き、新しい土地での生活が始まった。どんな感じなのか、あらためてご紹介。
ペニーの旅についてご心配いただいたみなさん、応援ほんとに有難うございました!
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