今年はサンマが豊漁だそうで、外国にいて食べられないとなると余計にあの味を思い出す。
サンマをめぐる最高の思い出は、その水揚げで知られる北海道は花咲港を撮影で訪れたときのこと。
岸壁につながれた漁船を撮っていたら「兄ちゃんら、テレビかい?」と言いながら漁師さんが降りてきて、「サンマ食うかい?」と尋ねてくる。
少しめんくらったが、撮影クルー最年長のディレクター(わたしはその助手)は「ごちそうになります」と満面の笑み。
おもむろに船に引き返した漁師さん、まもなく三枚におろしたサンマを右手にぶら下げ、左手には醤油の小皿をかかげて戻ってきた。
「ほら、食え」
ディレクター氏、受け取ったサンマをちょんと醤油につけて頬張るなり、うううーん・・・と目を白黒させる。「うめべや〜!」と漁師さんも満面の笑み。

後日、このときの思い出をディレクター氏と語り合ったとき、「サンマの脂が醤油にぱーっと散るのを見て最高!と思ったねえ」という言葉が強く印象にのこった。
20代のわたしは、食事といえばただガツガツ食うだけの粗野な男で、魚の脂にうま味が凝縮されていること、脂を視覚でとらえ、口に入れる前から楽しむことなど思いつきもしなかった。
「ぱーっと散る脂」を見て舌なめずりしたディレクター氏は、人生の楽しみを知るオトナであった。貪欲なスケベと言い換えることもできるだろう。そういう姿を見ながら、幼稚なわたしなりに大人の階段を一段ずつ昇っていたような気がする。スケベなだけで大人になんかなってねえという説もあるが。
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