「第二のローマ」と呼ばれたトリーアを、妻はたいそう可愛らしい街だと気に入っていた。
街ごと博物館のようなローテンブルクとはちがい、ローマ遺跡以外は新しい感じがするかわり、全体に明るくてしゃれている。
旧市街のサイズは知れていて、大聖堂とマルクト広場を中心に南北へそれぞれ300メートルも歩けば尽きてしまうから、あれもこれもと焦ることなくゆったり楽しめる。
ところでわたしはドイツを「ヨーロッパの田舎」と表現したが、それはあくまでフランスやイギリスなど西方の連中から少し軽く見られている(それだけにひとたびドイツが牙をむくとビビりまくる)ことを意味しているだけで、個人的にはドイツ文化をけっこう尊敬している。
広場の噴水の足元に一台のピアノが置かれ、誰でも好きにさわっていいのだが、このとき目撃した少年はちょっとすごかった。
鍵盤に両手を振り下ろし、だだーん、ぽろりーんと音を立てる。
でたらめに遊んでいるのかと思った数秒後、あれれ?となった。
彼が出しているのは単なる騒音ではなく、現代音楽ふうの複雑な和音と聞こえたからだ。複雑だが濁ってはいない、きれいな音。
少年が手を振り下ろすたび、和音はゆるやかに展開し、きわめてスローなメロディーを構成していく。
たまたまそう聞こえただけかと思ってしばらく耳を傾けたが、少なくとも20秒ほどの間その「曲」を弾いていた。直後、脇にいた小さな坊やが両手でじゃじゃーん!したせいで演奏は終わってしまったが。
少年がそういうピアノを習っているにせよ、アドリブだったにせよ、さすがは「三大B(バッハ、ベートーベン、ブラームス)」を生んだ国だわいへへえええっと頭が下がる思がしたのである。
ドイツの好感度アップしたところで街を歩いてみよう。
この日(月曜)はマルクト広場に市が立っており、地元の人出も多かったように思う。
わたしたちはいいタイミングでドイツにいた。
緑色の瓶に詰められたワインは今年の仕込みが終わったばかりのやつで、しっかり蓋されているにもかかわらず、ぷつぷつと盛んに発泡している。
作りたてならでは。今しか飲めない新酒でありますね。家まで持ち帰るだけの自制心がなく、ホテルで開けてみたところ、お約束通りの甘味たっぷりすっきり味。たいへん結構でございました。
せっかくだから古いヨーロッパの空気を吸ってみましょう。
「1832年のアーヘン」とか、いいよねこういうの。
うちは古地図が好きで、旅行のたび気にしてるんだが、本物は目の玉が飛び出るほど高く、かといって復刻ものでいいやという気分にもなかなかなれず、困っている。
妻のご先祖はあのあたりかなどと思っただけで吸い寄せられるものがあるが、まず慌てることなく選んでみよう。
メシはどこで食おうか。
市城門(ポルタ・ニグラ)すぐ前にある Brasserie ZUR SIM というレストランは、素晴らしい借景のみならず良好なレビューを見て選んでみた。
ローテンブルクで妻をよろこばせたアペロールとワインでスタート。
わたしたちのテーブルを担当したウエイターさんは西アジア系(アフガンとか)で、嫌味でない愛想よさとキビキビした対応に好感をもった。これがドイツ人だと、生真面目なひとが多いかわり、冷たい印象だったり命令調でしゃべったりすることが少なくなく、そういうときは気持ちがシュンとするからねえ。
肝心の料理は、ドイツだから塩分強めの傾向は否めぬものの、割と品のよい味付け。
ドイツ風ピザ?みたいなやつ、パリっとしてGOODいやGUTでありました。お会計はチップこみ50ユーロぐらいだったかな。
そこまでにしておけばいいのに妻ったら・・・
旅先の開放感つーか、
本性が出たっつーか、
アブナイ道に足を踏み入れてしまった。
今回の旅ではドイツ人のアイスクリーム好きの疑いが確信に変わったのだが、その描写は別の機会にゆずるとして、甘いもの戦線にはアメリカ人も日本人も参戦!
乾杯!
ダイエットは家に帰ってから!
そんな感じで日が暮れたんだが、わたしの誕生日のお楽しみまで行けなかったので、なんとこの続きはあらためて。
ドイツ旅行いい加減にしろって?えらいすんまへん。
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