ようやく元日の出来事にブログが追いついた。
朝、あり合わせのもので雑煮をつくり、屠蘇のかわりに抹茶を飲んでセレモニー気分を出したあと、海に向かった。
海岸でペニーが大興奮。
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インスタにもあるようにここはオーストエンデという、ブリュッセルから1時間半ほどの街。
昔は小さな漁村だったと思われるところに、今では別荘マンションが立ち並び、一大リゾート地として栄えている。19世紀の国王レオポルド2世がここを気に入って別荘を建て、ビーチリゾート地として栄えるよう尽力したとかいう話もありで。
ええっ、寒い寒い言ってるブリュッセル(北緯50度=サハリン島)よりもっと北にリゾートとはこれいかに。
実はこのあたりの海には赤道で温められた北大西洋海流が流れ込むため割と温暖で、内陸のブリュッセルより1〜2℃高い感じ。
対岸のブライトンもビーチリゾートとして有名だよね。大西洋はヨーロッパ人に優しい海なのであります。
とはいえ最初わたしたちは、正月をパリで過ごすつもりでいた。クリスマスから新年にかけてのパリは夢のように美しく装っており、それを楽しみに過ごしに行くひとが多いのだそうで、うちもいっちょやってみるかとなっていた。
ところが年末のパリではオミクロンが爆発し、いくらホテルと散歩が中心の滞在だとはいえヤバくね?となって断念。距離と時間からいって電車移動になることも懸念材料だった。
さりとてパリの代わりの目的地があるわけでもなかった。
「じゃあ、ペニーさんが大好きな海へ行こっか」
そう妻が言い出し、目指したのがオーストエンデだった。
ペニーも楽しんでくれたけど、わたしたちも屋台で海鮮スナックを買い求め、負けないくらい楽しかった。
妻の日本の祖母はシツケの厳しい士族家庭そだちで、孫がお祭り見物に出かけたというだけでも「あのような下賤なところへ・・・」って感じでいい顔しないうえ、たこ焼食べたの美味しかったーなんて報告しようもんならチクリとお小言なひとだったせいで、妻は今でもこういうシチュエーションで気持ちが落ち着かないところがあるもよう。
オーストエンデには1泊しただけで、海岸沿いに東へ移動開始。
いくらペニーが海好きでも、夏でもないのにずっと海岸にいるわけにもいかず、少し内陸にもどってダンメという街に向かう。
地図を見てお気づきかと思うが、ダンメはブルージュの郊外といっていい。あとでわたしたちは再びブルージュに向かい、少々羽目をはずしてえらいことになるのだが、それはまだ先の話。
ダンメに近づくにつれ、惚れ惚れするような美しい運河があらわれ、これに沿ってクルマを走らせる。実はダンメには日本人にもお馴染みの姿をした「あるもの」があるのだが、それはもうちょっとだけ先の話。
ダンメの入り口に、一基の風車があった。
以前はそこらじゅうに建っていたものが時代とともに消え去り、ひとつを残すのみだという。地域の顔として保存すれば有力な観光資源になっただろうに。ブルージュの例に見るように、街の盛衰は偶然に左右されるところが多いね。
風車といえばオランダだが、ダンメはオランダとの国境に接していることを頭に置いといてちょうだい。
ダンメの規模は街というよりは村落で、写真のメインストリートを中心として住宅や商店などが百数十軒もあるだろうか。
こんな小さな街でも、16世紀にオランダによるスペインからの独立戦争が始まると、戦略的に重要な地点となり、スペイン軍はこんなもので街をかこった。
七つ星型の要塞。スペイン軍は、オランダ軍の進軍をここでなんとか食い止めることができた。だから現在のオランダ国境が目の前にあるというわけ。
逆に、もしもオランダ軍がダンメの要塞を落としていたら、この地域(フランドル地方=昔からオランダ語話者が住んできた)はベルギーではなくオランダになっていたかもしれない。
そんな歴史の if を考えさせる要塞はほぼ姿を消しており、堀の名残りを地図上に残すのみ。
要塞の内側はダンメの集落以外はほとんどが農地になっており、牛や羊がのんびり草を食んでいた。
こんな鄙びた村落にも、ものがたりがある。
もともとオランダ人が住み、フランスやスペインに支配され、大戦争があり、その後の紆余曲折の結果ベルギーの一部になったフランドル地方の歴史が、ダンメには凝縮されている。
そういう重みみたいなものを空中に感じながら、奇妙な教会に迷い込んでみた。
生きてるのか死んでるのかわからんクタビレっぷり。
観光寺院からは漂ってこないリアルな迫力というか・・・。
よく見ると、かなり凝った建物。レンガがきれいだったら「華麗」と皆がいうだろう。
中庭に巨大な現代アート。
これ以外にもあちこちに作品が置かれていた。
教会がけっこう元気に活動しているのか。それともダンメ住民が楽しく利用しているのか。
墓地はたいへんよく手入れされており、清らかな雰囲気。
墓石に「2019年」「2020年」と没年が記されたものがある。
ついこのあいだまでここへ墓参りに来ていたに違いないひとたち。
地に足のついた人生ってのは良いもので、自分のような根無し草&死後は散骨派の人間をちょっとばかし不安にさせる存在感がある。
ここには紹介しなかったが、ダンメにはユニークな本屋をはじめ不思議なスポットがいくつかあり、ブルージュから足を伸ばす価値はあると思った。
このあと御一行は再びのブルージュに向かい、自堕落な人生を謳歌したのでありますが、それについてはあらためて。
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