アメリカの官舎(うちの場合は借り上げマンション)は入居者が壁をどんな色に塗ってもかまわないし、額縁の釘をばんばん打ってもOKってのはおそらく役所にかぎったことではなく民間でも常識で、皆さんそうした環境をフル活用してたいへん上手に部屋を飾っておられる。
わが家はブリュッセルに越してきて5か月、釘打ちをしてくれる業者さんとの立ち合いの呼吸が合わぬままここまで来てしまったが、このたびようやく作業してもらえることとなった。
さっそくドリルでうぃーんと穴開け。改造したちりとりで粉を受けるところがミソ。
写真の真ん中にあるのはエルサレム旧市街の水彩画で、90年代、わたしたちはあるプロジェクトでエルサレムに1ヶ月滞在して死ぬほど働いた灼熱の思い出(笑)がある。
キリスト教徒・イスラム教徒・ユダヤ教徒の息が染みついた壁だ。
ドアをはさんだ隣の壁には、これを掛けてみた。
バングラデシュの農村風景を描いたタペストリー。
人気のある土産物だが、品質はピンからキリまであり、選ぶのに時間がかかった。
「ピン」といっても芸術的になるわけではなく、どこまでも素朴な味わいがあの国らしくいていい。
食器棚の反対側にはダッカの画廊で入手した絵。
過密と熱気がキャンバスに塗りこまれたこの作品は、縦が30センチほどの小品。
でっかいほうのやつには、リビングセットの脇に来てもらった。
近年メキメキと名を上げている Helal Shah という若手が描いたダッカの旧市街。
このひとの作品はいいものがたくさんあって迷ったが、雨上がりの光が美しいこれに決めた。わたしたちにとっては、良くも悪くもダッカのあの空気感を思い出させてくれる大切な一枚。
日本からも参戦。
実家の整理をしながら妻が「カワイイー」と声をあげたスズメちゃん。
わたしは鳥のうちでもスズメを愛するところ激しく、衆議一決した。
この東アジアコーナーから視線を左にもっていくと、中東になる。
妻が高校時代をすごしたカイロからは、スーフィーダンスと楽隊。
ふたりでこのタペストリーを買ったのはずいぶん前のことで、日本の実家に預けっぱなしになっていたのをダッカに送り、例の画廊で額縁に入れてもらった。ずーっと気になっていて、ようやくすっきりすることができた。
玄関ホールに移動。
おととしの冬、まだコロナが中国のローカルな問題だったころ旅したロンドンの骨董街ポートベロー通りで見つけたアート写真。旅と読書にかかわるものを選び、ダッカで額縁をあつらえてもらった。
ところでこの額縁は裏側の掛けヒモの長さが微妙に違っており、それを見越して釘の位置を決めないときれいに並ばない。
そこはさすがにプロの技で、実にうまいことつけてくれた。やり方を聞いときゃよかったともいう。
で、その脇っちょにふたたび現れた日本勢は、母が遺した書。
プロの書道家とは比ぶべくもないが、登山好きだった母が「四方を山に囲まれて・・・」と思いを込めたものだろう。文字の雰囲気を妻が気に入り、うちで引き取った。ブリュッセルの壁に掛かってるよと言ったら、作者は目を丸くするに違いない。
以上、ようやく大人ぽい部屋になりつつあるも、中東・アジアへの激しい偏りを見せるわが家のインテリア。
ヨーロッパから少なくともひとつ選んでから去りたいものだが、さてどうしたものか。
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