済州航空の惨劇の原因究明はこれからだが、飛行機というのはひとつ間違うとえらいことになるものだと多くのひとが胸に刻みなおしたところだろう。
妻は何年か前、アメリカ東海岸から西海岸へ飛ぶ出張があり、帰りの便で肝の縮みあがる体験をした。フラップが出なくなったのだ。
フラップは離着陸時、主翼からにゅうっとせり出してきて、翼の面積を広げる働きをする。
これにより上昇に必要な揚力を得たり、着陸に向けてスピードを落としたりする重要な装置だが、このフラップが故障して出てこなくなった。
そのため妻の乗った飛行機は通常よりはかなり早いスピードで滑走路に進入し、そのあとは根性で停止させるほかなくなってしまった。
だがこの世には根性が通じない局面もある。着地後、勢い余って機体がひっくり返ったり、どこかに衝突しようものなら、主翼の燃料タンクが大爆発を起こしてしまう。
そのリスクを下げるため、非常着陸することになった飛行機はそこらへんをぐるぐる回って燃料を消費したり、タンクから海などへ投棄したりする。妻の飛行機もそれをやったわけだが、だからといって安心できるわけもなし。
下降する機内から見下ろすと、滑走路にはすでに数えきれないほどの消防車が出動して赤いランプを回している。妻はカクゴを決めた。
どっすん!
見たことのないハイスピードで着地した機体は、それでも進路を逸らすことなく真っ直ぐ走り、少しずつ減速していった。ワシントンDCの空港は超大型機が離発着できる高規格の空港であり、長い滑走路は国内線の比較的小さな機体がオーバーランしたとしても、余裕をもって止まることができる。
もしもあのときすべての悪条件が重なっていたら、妻はこの世にいない。その幸運を喜びながらも、ちょっとした用があるたび飛行機で移動する今の暮らしは、カクゴのうえで生きなくちゃなあ。
そやな。
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