Pennyと地球あっちこっち

日米カップルの国際転勤生活 ~ ただいまラオス

禁断の「あの手」で

とあるアメリカのオフィスで、従業員に賞を授与する恒例行事があった。仕事ぶりを褒めたたえてモチベーションを上げてもらうためのもので、受賞者の選考はけっこう真面目にやっている。各部の長が推薦文を書いて上にあげ、審査のうえ受賞者が決まるわけだが、各部ではスタッフの数だけ推薦文を用意するので、鉛筆なめなめ作文する部門長の負担はバカにならない。

そうでなくても激務でやせ細るほど忙しいある部門長は、この作業が重要な職務であることはわかっていても、なんとか負担を軽減する方法はないものかと考え、一計を案じた。作文材料をAIに放り込み、〇〇文字以内の推薦文を書けと命令したところ、じゅうぶんに使用にたえるものが出力されてきた。

AIがこうした要約作業を得意としていることはよく知られているが、ふだんから文書づくりにうるさいタイプの部門長が「これ、ほとんどこのまま使えるじゃん!」と目を見張ったというのだから、なかなか馬鹿にならない。でもまさか本筋の業務でAI作文してねえだろうなって?うーん、今はまだそういう感覚だが、十年もたてば「昔のひとはそう思ってた」になってるかも。

一方で、今はまだ使っちゃいけないところでAIに頼ったせいで大コケした若者がいる。その学生は、上記の部門長が仕切るプロジェクト(奨学金的なもの)への参加を希望し、志望動機などをまとめた文章を提出してきた。

もうおわかりかと思うが、この学生はAIを使ってしまった。応募要領にはAIの使用禁止が明記してあるというのに、誘惑に負けてしまった。だが、審査する側は、すでに多くの大学などで行われているのと同じく、提出された文章のすべてをAIチェッカーにかけている。この学生の場合、「AIが書いた文章である可能性90%以上」と判定され、応募は却下されてしまった。それどころか、この学生の名前は主催団体のブラックリストに載り、今後いっさいの応募をお断わりされてしまうだろう。

作文なんて誰に書かせても同じことじゃんと思う方もおられるかもしれない。そうだよね。これも「昔のひとは」のひとつになるかも。イヤフォン式の同時通訳機が普及したら、ひとっことも理解してない言語で自在にコミュニケーションし、外国の大学ですらそれで卒業できる時代が来るかもしれない。それは教育の概念を根本から変えるような出来事じゃないか。

さしあたり我が家では、ペニーさんの「わんわん」「きゅううう」が人間語に変換される日が来たら最高と思っており。

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