インプラントがやっと入った。正確に言うとインプラント=ネジはとっくの昔に入っていたのだが、その上に取り付ける歯の製造ミスにより作業が2回も延期となり(第一幕、第二幕)、このたびようやく完了した。両顎を余すところなく使いガッツリ噛める幸せを噛みしめている(あれ?)
こんな話題はわたしの身の回り2メートルぐらいにしか影響を及ぼさないが、歯医者のパテル先生はもちっとスケールの大きい話をしていたぞ。作業の準備をしながら彼はこう言った。
「俺さ、きのうさ、ホワイトハウスの中に入っちゃったよ」
たしかにこのクリニックはホワイトハウスから僅か2ブロックのところにあり、肩のいい野球選手ならノーバウンドでボールが届く距離だが、今回はそういう問題じゃない。ホワイトハウスにはよほどの理由がなければ入れない。
「ワオすごいね!何しに行ったの?」
「モディだよモディ。首相が来てるじゃん?」
おっしゃるとおりインドのモディ首相が訪米してニュースになっていた。EUやアメリカにいい顔してみせたと思ったら中国やロシアにもエサを投げるご都合主義の権化モディ首相をなんとか西側陣営に引き込みたいバイデン政権は、モディを国賓として招く異例の歓待ぶりを見せた(首脳だからといって自動的に国賓になるわけではない)。
「アメリカも大変だよねー、今の世界情勢を考えたらモディがどんだけご都合主義でも笑顔で抱き込まなきゃいけないし、かといってインドの人権問題の深刻さに怒ってる議員もいるし・・・」
という的確(かつ意地悪)なセリフが脳裏をかすめるのをやり過ごし、わたしは笑顔で応じた。
「すごいね!よかったでしょ、ホワイトハウス」
「うん、初めてだったから楽しかったよぅ」
どうやらパテル先生は、ホワイトハウスでの歓迎式典にインド系市民のひとりとして参加したらしい。
この場に参加するには、応募して抽選されるのを待つのか、それともインド系社会への普段の功績が認められて招かれるのか。そういう実務をアメリカ側と協力しながら進めるのがインド大使館の職員であり、わけても国賓となれば準備はたいへんだったことだろう。
ちなみにパテル医師はホワイトハウスの庭に入っただけだが、もっと「上級」のインド系諸氏は昼食会にも招かれ、さらに上級のパワフルな方々は夕食会に招かれた。
そういう粘っこい連中の機嫌をそこね禍根を残すことになってはアカンので、席順をどうするのか、スピーチは誰にさせるのか、準備には骨が折れたことだろう。そういえば岸田首相が1月に訪米したとき、俺んとこには招待状がひとつも来なかったそういうミスをするようでは日本大使館もまだまだやねえ。
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