妻がとっても面白いことを言った。
「もう全部開けちゃおっかなー」
うちはイヌばっかりがアドベントカレンダーを楽しんでいるわけではなく、昇進とそれにともなうささやかな昇給を祝って妻用のも手に入れた。結婚後はじめてのことで、わたしもなんだかうきうきしている。
毎日ひとつずつ出てくるアイテムは、なんとかオイルとかそういうご婦人用で、わたしには使い方の想像がつかないものがけっこうある。妻は中身がだいたいどういうものか承知しているようで、良くも悪くも開けてビックリはないものの、楽しそうに開封していた。
ところが４個目まで来た朝「もう全部開けちゃおっかなー」が出た。子供みたいに毎日開けなくったって結果は同じだというのだ。この件、わたしにしてみればまったくどっちでもいいというか、包装紙をびりびりびりっと破る感じの「全部開け」も楽しそうに思えたが、ついつい無難な反応をしてしまった。
「せっかくそうなっとるんやからそれでええやん」
文字化するとけっこう意味不明だが、要するに毎日ひとつ開けようよという提案。妻は１秒半ほど考えてからこっくりと頷き、
「そだね、まあそういうもんやからね」と応えて一件落着。朝の開封の儀はクリスマスイブまでペニーと一緒に続けることとなった。
ご婦人用アドベントカレンダー、いくらしたのか聞いてないが、しっかりオマケがついており、その価値全体を見渡して妻は手を出す気になったらしい。
試供品ざっくざくのポーチ。妻は「ふふん」とか「おー」とか言いながらひっくり返していた。
考えてみればオトコというもの、このように雑貨を楽しむ傾向が人生において乏しく、どかんとバイク一台買ってニマニマと笑み崩れながら洗車したり、１万円のスピーカーと５０万円のスピーカーの音質の差がだれにもわからないオーディオに凝ったり、女性から見たら意味不明な散財にふける不思議な動物である。男に生まれて後悔はしていないが。
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