ストラスブールから1時間ほど南下したところにコルマールという街がある。
人口7万たらずの街だが、アルザスワイン地帯の中核都市として栄えてきただけあって、伝統的な建物にも立派なものが多い。
コルマールといえばココ!という映えスポットには、カラフルな家並みにカメラを向けるひとたちの群れ。
あれだよね、オレらの世代は幼いころの写真なんてたいして多くないうえ、親と一緒に写ったものなんて数えるほどしかないが、今はちがうわなあ。
映えスポット、もう一発。
「ハウルの動く城」のモデルになった邸宅。
16世紀に金融業で財をなした商人が建てた家で、立派な出窓や外壁いっぱいに描かれた壁画が個性的。コルマールの建築ルネッサンスの走りといわれている。
「ハウル」ではどのように描かれているのかはこちらを参照。ジブリは版権管理がタイトでおっかないから画像はここに掲載しない。
この屋敷をはじめ、コルマールには存在感のある建物が多く、見ていて飽きなかった。
ただしわたしたちは街の様子を慌ただしく確認したあと、20分ほどクルマを飛ばしてコルマールの隣村まで移動した。
ブラピとかいうハリウッドスターがわざわざ自家用ジェットで買いに来るというジャムを求めて。
なにハリウッドじゃ足りねえ?
グルメとして知られるシラク元大統領夫妻をはじめ、ジョエル・ロブションやアラン・デュカスといった三ツ星シェフが個人的に愛用しているって噂だぞ。
すごいジャムの店があるのは、Niedermorschwihr(ニーダーモルシュヴィア)という村。
人口600ほどの小村ながら、ワイナリーが5軒もあるのはさすがワイン産地。
集落の中ほどにある、ぱっと見何屋さんだかわからない店舗が問題のジャム屋さん。
Maison Ferber メゾン・フェルベールというこの店に入ってみよう。
棚にずらりと並んだジャムのほか、平積みにされたお菓子やケーキが日本の団子屋さんみたいで微笑ましい。
ジャムの作り手は、クリスティーヌ・フェルベールさん。食材の旬ともっとも美味しい食べ方を熟知した彼女は「ジャムの妖精」と呼ばれているそうな。
あまりの評判の高さに、ブラピなんとかさんが自家用ジェット機で買いに来て、店員は相手がブラピと気づきはしたが、なぜか奥で作業中のクリスティーヌさんに知らせることなく、映画スターはあっさり買い物を終了して立ち去った。あとでそのことを知らされたクリスティーヌさんは「あらそう」と言っただけだったという、いろいろフランス的な逸話がおもしろい。
ジャムの話を続ける前に、平積みされたお菓子のこと。
メゾン・フェルベールはケーキの評判もたいへん高く、試してみたらえらく美味しかった。
とくにマカロンは、フルーツの味わいがしっかりと出ており、甘さ控えめなのにずっしりとした食べ応えがあり、妻は「過去最高のマカロン」と目を丸くしていた。
さて、ジャムだ。
「妖精」の腕前やいかに・・・?!
ラベルに confiture(コンフィチュール)と書いてあるように、厳密にいえばジャムとは少し製法が違い、ジャムと比べてフルーティー、甘さ控えめという特徴がある。
食べてみたら実にその通りで、ナチュラルな美味さがじわじわ来ましたよ。
一般にコンフィチュールはジャムよりとろりとしていることから、紅茶などに混ぜたり、フルーツドレッシングとしても使いやすいのだとか。
一説によれば、パティシエ/ショコラティエの巨人「ピエール・エルメ」ブランドのジャムは、クリスティーヌさんが作って納入しているという。
どうだ恐れ入ったか。
日本では3000円近くするものが、製造元のこの店では1000円ほどのお値段だから、今度日本へ行くときは100個ほど仕入れていって売りさばいたら飛行機代くらい出るのじゃアルマイカ。
わはは。
そういえば、妻の職場でクリスマスプレゼントを「匿名サンタ」として贈り合うイベントがあり、コロナ下で百貨店めぐりとか勘弁してよとボヤいていたが、このジャムだったら予算10ユーロ以内というルールに合致して都合よしということになり、1個が旅立っていった。受取人が職場で嫌われている粗暴な人物であるため、決して楽しい結末とはいえなかったことが残念だけど。
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