警察が来たとき、その作業の様子をじっと見つめる兄ちゃんがいた。
最初はそっちの関係者(たとえば警察に雇われた運送業者)かと思っていたが、作業に参加するでもなく、ひたすらそこにいるだけ。
謎が解けたのは警察が引き上げたあとだった。
一台のトラックが入ってきて、兄ちゃんがいた場所に廃棄物用のコンテナを置いていった。警察がいるあいだは交通止めになっており、入ってこられなかったのだ。
さっそく作業が始まった。アパートの戸口から運び出された廃棄物がコンテナに投げ込まれていく。
どの部屋なのか、すぐにわかった。
最上階のこの部屋は、以前からひとめ見てゴミ屋敷だとわかる惨状だった。住人を見たことはないが、もしかしたら引きこもり系のひとがいたのかもしれない。
だがついにこの日、清掃業者が呼ばれて片付けが始まったわけで、うらぶれた風景におさらばできるのは大歓迎・・・
と思いながら、初めて開け放たれた窓に目をやった瞬間、壁の異様な落書きが目に飛びこんできた。
表示端末によっては見えないかもしれないので書き起こしておくと、
I'm so f**king Happy
そう書いてある。
ほんとに普通にシアワセだったのならいいけど、このシチュエーションで見るかぎり、人間の闇を感じてしまう自分を止めることができない。
右奥の壁にもなにやら書いてあるが、かなり暗くてガン見しなければ判別できず、そこまでするのはプライバシーへの踏み込みすぎだからやめておかなくちゃ。
でも正直いってこの落書き、存在感強すぎて引っ張られてしまうことは確かだった。
片付け作業には1日半かかり、コンテナと小型トラックの荷台をいっぱいにして終了。
これからあの部屋がどうなるのか、壁はきれいに塗り替えられ、誰かが入居してきて平穏な毎日を送ることになるのか、なんとなく気にしている。
この界隈、いわゆる移民労働者階級の街で、荒れちゃったひとを目にすることが少なくないからなあ。
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