東欧やアフリカからの移民の姿を見てきたが、ベルギーには中東からもたくさん来ており、たとえば我がホテルの部屋を週に一度掃除しにくるおばちゃんは見かけや名前からして間違いなくアラブ系だろう。
このひとFさんとわたしたちのあいだにはひとつ問題がある。
「あたしゃイヌがいるときは掃除に入らないヨ」
と、たいへん固い表情をしておっしゃるのである。
Fさんにはワンコにかかわる非常に不幸な体験があるのかもしれないが、どちからかといえばイスラム教徒のイヌ嫌いのためではないかと推察。
ご存じのようにイスラム教ではイヌが穢れた生きものとされており、飼うなんてとんでもねえ近づくのだっていやだというひとが大勢いる。
このためわたしはFさんご来場の時間に合わせてペニーを散歩に連れ出すことにしている。
週一のことだから負担というほどではないが、なんだかなぁという気分はある。
客によっては掃除人がなにをエラえらそうにとフロントにねじ込むことがあるかもしれない。もしもそうなったとき、ホテルの支配人はイスラム教徒たる従業員にどのように話すのだろう。
これが日本だったら問答無用で掃除しろとなりそうなものだが、近年はそればっかりでもないのかねえ。
イヌ嫌いのイスラム教徒への配慮は、街なかでも同じこと。
散歩中、容貌や服装でムスリムとわかるひと(頭ぐるぐる巻きとか)が近づいてきて、イヌ嫌いのそぶりを見せることがある。
成人男性は勇気があるからか見栄を張ってか平気な顔のひとが多いけれど、女性や子供には全身で困ったり怖がったりすることが珍しくない。
そういうときはペニーを脇に寄せたり、狭い道だったら反対側に渡ったりして不幸な遭遇を避けるようにしている。
むこうが先に道を渡っていったりすると、いちおう心のなかで「すんまへんなあ」と謝ったりする。
ベルギーに住むイスラム教徒は、5年前の推計で人口の7.6%という数字があり、出生率などを考えると今は10%近くになっているかもしれない。
行き交うひとびとの10人にひとりがムスリムだとすれば、「イヌ嫌いなんて勝手にやってりゃいいじゃん」とも言っていられなくなるのが現状ではないか。
肌の白いベルギー人がどう思ってるか知らないけど。
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