オソロシイことが起きている。
ブリュッセルに来てからひと月が経過した。
ここでの妻の任期は2年。たった24ヶ月のうちすでに1ヶ月を消化してしまったという事実にビビらされている。
ヨーロッパを存分に楽しもうと思って乗り込んできたのに、こんなスピードで時間が経っていけば残り23ヶ月なんてあっという間だ。
ダッカでは時間の経過がもっと遅かったような気がするんだが、こりゃどういうことかね。
てなことを言いながらも、世界遺産をひとつ見てきた。
これほど地味なのに、ハートにぐっと刺さって来る世界遺産もないだろうと思った。
わたしたちはブリュッセルから電車に乗って東を目指した。
田園風景を眺めがら30分ほどで着いたのはルーベンという街。
小さいながら知られた観光都市だから、興味ある方はググっていただくとして、街の中心部はこんな感じ。
まずは広場に無数に出店したレストランで喉の渇きをいやす。
これが正しい観光客のありかたってか。
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パスタで腹を満たしたら、眠くならないうちに歩き出す。
10分ほどで世界遺産「ベギンホフ修道院」に到着。
旅行サイトに「中世、女性の自立を支援するために設立された」とあるとおりだが、通常の修道院ではなく、神に祈る生活はしたいが俗世間との関係を完全には絶ちたくない女性たちが暮らす場所としてつくられたらしい。
最盛期には360人が暮らしたベギンホフは、何本かの道路に面して集合住宅や教会が建ち並ぶ街区になっている。
建物は素朴のひとことだが、味わい深い。
驚くべきは、この「半宗教女性たちの園」が現代まで800年近くも続いたこと。
人類史をひもとけば、宗教集団が独自のコミュニティーをつくった例は数多あるけれど、地域の支配者が入れ替わり立ち替わりやってきては従属と納税を求め、生産効率が低ければ虐げられ、押し返そうとすれば罰せられ、宗教紛争もあるなかで、コミュニティーが何世紀ものあいだ維持されることは皆無にちないのではないか。
ところがベギンホフは、13世紀の発祥いらい脈々と生き延び、最後の柔道女は1988年までここに暮らしていた。
時代の波を乗り切り乗り切りしてきた彼女らは、欲望うずまく俗世間とうまく折り合う特別な処世術をもっていたのかもしれない。
かしこく、たくましい人たちだったのだろう。
そんなベギンホフも、戦後は急速に住人が減り、建物は軒並み風化して消滅の危機にされされていた。
紆余曲折の末、ベルギー屈指の名門ルーベン大学が60年代にこれを買い取って修復し、教員・学生の居住施設として利用している。
過去と未来の見事な融合という感じがして、なんだか気分がよくなった。
派手さがない代わり、いろんな波がじわじわと押し寄せてくる世界遺産なので、興味ある方はぜひ足を運んでください。
実はこの近辺にベルギー最古の植物園があり、それはそれは素晴らしい内容で、しかも一年でこの季節がもっとも美しいと聞いたのだが、睡眠不足とかの事情があり、今回は退却した。
旅行でルーベンに来ていたら何があっても足を運び、疲労を溜めたりするものだが、その点ジモティーは気楽なもので、また来りゃいいさ(往復電車賃ひとり7ユーロ=930円)となってしまう。
ヨーロッパは行きたいところだらけなので、二度目のルーベンがあるかどうかわからないが、まあぼちぼち行こうかねという。
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