Pennyと地球あっちこっち

日米カップルの国際転勤生活 ~ ただいまラオス

黒人いじめ

ダッカ発の数日前、妻の知り合いのアメリカ人Fさんから届いたメッセージの内容は、けっこうぶっ飛んでいた。

「コロナ陰性証明書、コピーを10通は持っていったほうがいいよ!」

なんじゃそりゃ。

彼は休暇でモルジブへ向かっており、ダッカ空港で出国手続きを済ませたところでメッセージを送ってきたのだが、いったい何が起きているのか。

わたしたちが知るかぎり、陰性証明書は出国時に提示し、到着国でまた提示するだけだから、1通持っていれば十分のはず。

ところがFさんにはとんでもないことが起きていた。

 

まずダッカ空港が全体的にキビシかった。陰性証明書の提示は、

1.ターミナルビルに入るとき

2.航空会社のチェックインカウンター

3.出国手続きに並ぶ前

4.出国手続き

5.出国手続きエリアから出ていくとき

合計5回も求められる。無駄の典型だが、途上国ではこういうことがよくある。

で、気の毒なことにFさんは、提示した証明書を返してくれないことが何度かあったらしい。

係官がぼんやりしていたからか、何らかの意図があってそうしたのかは不明だが、Fさんはたいそう慌て、コピーは10通!とアドバイスしてきてくれたのだった。

 

わたしたちはさすがに10通までは用意しなかったものの、念のため数通のコピーを持参したが、返してくれないという現象は一度も起きず、結果的には1通で済んだ。

それではFさんには何故そのようなことが起きたのか。

ものすごく不運だったという以外に、彼がアフリカ系であったことが一因したかもしれない。

バングラデシュでの黒人差別はけっこうキツく、不愉快な思いをすることが少なくないという。

いうまでもなく教育レベルの高いひとたちがそういう態度に出ることは(あまり)ないと思うが、そうでないひとたち、たとえば空港の警備員などが黒人に陰湿な意地悪を仕掛けてきたとしても驚かない。

 

Fさんはまだ若くて世間知らずなせいか、状況から自分への差別を読み取る能力が育ちきっておらず(それは幸せなことでもある)、ダッカ空港での体験を通して「コピーはたくさんいる!」としか思わなかったようだが、そのあとモルジブに着いたところでまた別の嫌な体験が待っていた。

入国管理官が「おまえ何しに来たんだ?休暇だあ?なわけねえだろ一人で来てるくせに」といってハンコを押してくれず、別室へ連れ込まれてあれやこれや調べられたという。

観光で食ってる国がそれかよ?!という話で、もしもFさんが白人やアジア人だったら起きなかったかもしれない。いや起きないだろう。

それはバングラデシュのみならず、南アジア世界ぜんたいでの黒人差別の強さを見れば不思議なことではないと思う。

 

ことほど左様に、この地球上で黒人として生きることには困難がともなう。

アメリカで Black Lives Matter (BLM) 運動が盛り上がったとき、

「いやいや白人の命も大切だろ」

という声がアメリカのみならず日本でもあがったが、こういう阿呆なことを抜かすやつが必ず出てくるのな。

誰の命も大切なことは何も言わなくったって当然で、問題は白や黄色と比べて黒い肌のひとたちの命が不当に軽く扱われていること。

黒人への差別は、正当な理由なく警察官に殺されてしまうような「大きな差別」だけでなく、水面下で行われるものが無数にある。

アメリカのある外交官は、任地のメキシコから陸路で戻ってくるとき、アメリカの入国管理官から(詳細は省くが)黒人だからというだけの理由でネチネチと文句をつけられ、外交官パスポートを提示して丁寧に説明しても耳を貸してもらえず、たいへん不愉快な思いをした。

こうした、いちいちニュースネタになどなりはしない「マイクロ差別」を日々受けながら黒人は暮らしており、このことはトランプが大統領になって以降、着実に悪化したようだ。

BLM の背景には、以上のようなことがあると思う。

 

わたしたちは何ごともなくダッカを離れ、流浪の旅(笑)に出ることができた。

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それは妻がバッグにぶら下げた箱根神社のお守りの御利益だったかもしれないが、今後はどうだろう。

アメリカ、ベルギーと渡るうち、不愉快な目にあうかもしれない。

コロナのせいで人心がスサんでるからなあ。 

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