Pennyと地球あっちこっち

日米カップルの国際転勤生活 ~ ただいまラオス

官僚の高笑いが聞こえる ~1500億円「誤送金」事件~

コロナにより空前の失業者数を記録したアメリカでは、政府が全国民への支援金(最大1200ドル、こども500ドル)給付を3月末に決定し、4月中旬には実際の給付が始まっていた。

その素早さに驚かされたものだが、やはりそこにはカラクリがあった。

今日報じられた ところでは、支援金はおよそ100万人の死者にも給付され、その総額は14億ドル(1500億円)にのぼったという。

国民の生き死にを確認もせずにばらまくんだったら、そりゃパッパと仕事が進むわけで。

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夢の小切手🤩

いまトランプ大統領の頭にあるのは再選の二文字で、コロナ禍に乗っかった敵づくり(=中国たたき)で強いリーダーを演出し、気前のよい経済対策で頼れるリーダー役を演ずることに全力をそそいでいる。

これは現職大統領としては当然の戦略だが、やっぱりトランプはやりすぎたようだ。

支援金の給付を2週間以内に開始せよ!という指令がホワイトハウスから担当官庁に下ったとき現場の官僚は、たったそれだけの準備期間では誤送金の山を築くからと抵抗したにちがいないが、トランプの怒号一発で押し切られたのだろう。

あげくの果てが1500億円の誤送金であり、そのうちどれほどが回収できるものか現時点ではわかっていない。

 

それにしても100万人もの死者に金を払うとかひでえ仕事ぶり、それくらいパッパと確認しろと思いそうになる。

だがアメリカ人は3億2700万人もいて、しかも日本のような戸籍制度がないから、国民の所在確認には膨大な手間がかかる。

2週間で「間違いのない給付」なんて日本でも無理ゲーな作業がアメリカでできるわけがなく、今回の失敗は当然の帰結といえる。

 

それでは戸籍制度は素晴らしいものなのかといえば、個人的にはかなり微妙。

日本では様々な手続きで戸籍証明書の提出を求められるが、記載事項をよく見てごらん、単にあなたという個人の存在を証明するのに

  • 両親の氏名
  • 死亡・離婚した家族(除籍者)の氏名

がなぜ必要なのか、もっとシンプルな方法がないのか、考えてみたことあります?

そういうムダはあるのかもしれんけど自分には不都合ないからどっちでもえーやーという人もいるだろうが、ほんとにそれでいいのだろうか。

 

戸籍制度は、個人を「家」の枠内に入れて管理するものであり、家柄と血統といったあなたの「素性」を一生のあいだ語り続ける。

繰り返すが、たとえばパスポートをとるとき、とっくに亡くなったあなたの親や別れたヨメの氏名まで提出する必要がどこにあるのかという話だ。

この制度についてはさまざまな角度からの批判があり、その多くに私は共感している。

戸籍制度は国民の人権問題をはらんでいる一方で、統治する側にとっては1億2700万人の素性を隅から隅までキッチリ管理できる優れものツールだ。

そのことをよく知っている日本の官僚は、今回のアメリカの「死者見逃し騒動」をどう見ているだろう。私には霞が関の高笑いが聞こえるような気がしてならない。 

 

なにいってんだ戸籍制度あればこその社会秩序だろうって?

いやいや戸籍制度があるのは世界でも日本と台湾くらい(中国には似ているけどもっと差別的な「戸口」制度あり)で、それ以外の国々は戸籍制度なんかなくてもちゃんと機能している。

たとえばアメリカでは、全市民(と永住者・外国人就労者)に9けたの社会保障番号が付与され、これが事実上の国民総背番号制になっている。わたしも持っていて、いろんな手続きに使っている。手続きのたびわたしの親や別れたヨメの氏名を報告する必要はなく、社会保障番号ひとつがわたしの存在を証明してくれる。

当然のことながら番号のハッキング犯罪は発生しており、それを理由にナンバー制度を否定する声が日本にもあるが、リスクゼロの制度なんてものは犯罪者がいなくならないかぎり存在しえない。現行制度による損失や不正義をはかりにかけながら戸籍とナンバー、どっちを取るのかと考えるべき問題だ。

 

個人を識別する制度をめぐって日本とアメリカのちがいを比較するならば、

  • 戸籍で国民を管理しすぎる日本
  • 国民を管理しすぎない自由なアメリカ

ということができる。

アメリカは、ロックダウンは人権侵害だ経済優先だといってコロナ対策の手をゆるめたら感染者激増しちゃった「自由重視」な州があったり、戸籍制度がないばっかりに国民の生死確認がままならなかったりと、自由の代償をそれなりに払ってはいる。

どちらの制度が絶対に優れているなんてことはないけれど、何を重視して制度を考えるのかという選択は私たちにも可能だ。

個人的にはおかみに都合のいい制度より、国民にとって利益の多い制度を選びたいと思っている。

 

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