Pennyと地球あっちこっち

日米カップルの国際転勤生活 ~ ただいまラオス

スーチーさんの悲しみ

さいきん刑務所から自宅に移されるという報道により久々に脚光を浴びているアウンサン・スーチーさん。彼女は先進国のひとびとの心すら揺さぶる自由と民主主義の闘士であるが、どうしてミャンマーの政権を担当できていないのか。軍部がひたすら悪逆非道だからか。

そのようにして白黒を判じていると、わたしたちの思考はいつも停止したまま。この場合、スーチー陣営の弱味についても想像を広げることでアタマを健全に保てるのではないか。

じっさい、スーチーさんにはリーダーとして重大な欠点を有していたのだろうと個人的には思っている。

彼女が率いる国民民主連盟は2020年の選挙で大勝利し、軍部から政権を奪った。スーチーさんは国家元首である大統領を超越した存在として、事実上の最高指導者となった。

神様のようなひとをリーダーとして推戴し、狂喜したミャンマー人だったが、政権の運営は期待したほどにはスムーズに行かなかった。ある研究者が独自に集めた情報をもとに分析したところ、スーチーさんの「弱点」が浮かび上がってきた。

それによれば、彼女の最大の問題は周囲を信頼できないことにあったらしい。

リーダーは、立場が高ければ高いほど、自身の動きは大きな方向性を示すにとどめ、実務は部下たちになるべく任せることで、大局をそこねない仕事ができる。ところがスーチーさんはそれがかなり不得意で、細かいことまですべて自分で決め実行しようとしていた。

どれだけ有能であっても、ひとりの人間にできることには限度がある。増してや国家としての土台がきわめて未成熟なミャンマーで、最高権力者が何から何まで仕切るなんて無理すぎる。そんなこんなで政権がぎくしゃくするうちに軍部が息を吹き返し、総選挙で勝った翌年(2021年)にスーチーさんは政権を失い、いろいろと理由をつけられて投獄されてしまった。

結局のところスーチーさんは、民主主義の理念はわかっていても民主主義の方法を知らなかったのかもしれない。

若くしてイギリスに留学して民主主義について学び、同窓生のイギリス人との結婚を通じて民主主義への渇望を深めてのぞんだ祖国の民主化ではあったが、その一方でリーダーの在り方についての学びが足りなかったのかもしれない。

ミンシュシュギなんて誰もわかっちゃいない祖国にそれを広めるのは並大抵のことではなく、「すべて私が・・・」としゃかりきになる気持ちは無理もないと思う。だがすべてを最高権力者ひとりの判断にゆだねるのは、皇帝や王様の国と変わらない。

民主主義の方法とは、ぐだぐだとした議論のなかから政策を見出していく効率の悪い方法であり、たいていの先進国はそれを我慢強くやり続けることにより、国家が大きく道を誤るのを防いでいる。このことは、ロシアやイスラエルなど事実上の独裁国家の仕儀を眺めるだけでも、よくわかる。

以上はスーチーさん批判ではない。民主主義と口では唱えても、いまだに「王様」しか生み出すことのできない段階にある国家について考えてみたかっただけだ。78歳のスーチーさんの監禁が一日も早く解けることを祈っている。

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