夜、居間でテレビを観ていたら、突然奇妙な音がした。
虫が鳴いているような、赤ん坊が言葉を話し始めたときのような、文字にし難い音。
それが家中に響きわたるほどの音量だったので、かなり驚いたわたしたちは、すぐにテレビを止めて立ち上がり、音のする方に向かってじりじりと進んだ。はっきりとは覚えていないが「おい、誰だ?!」みたいな警告を大声で飛ばしていたのは、悪意のある人間が仕掛けてきたことのようにも思えたから。
といっても武器になるものがそこらにあるわけでもなく、へっぴり腰で進んでいくわたしたち。蜘蛛一匹見ただけで大騒ぎする妻がわたしの横にぴったり寄り添って進んでいくのは、腹が据わればかなり勇敢なキャラゆえか(蜘蛛については、幼いころ暮らしたテキサスのど田舎の寝室やトイレで遭遇した巨大タランチュラのトラウマがあるらしく、これはもうしょうがない)。
音は部屋の隅から聞こえていた。天井近くに名刺サイズほどのプラスチックの箱が取り付けてあり、それが音源かと思った。安っぽいスピーカーを通して聴くような音質だったもので。
だがこれはちがった。あとで調べたところ、留守宅への侵入者を監視する動作感知器らしく、言葉を発するようなものじゃない。
何が起きているのかさっぱりわからないわたしたちはかなり気持ち悪く、翌日妻は職場の住宅担当に問い合わせるつもりで出勤していったのだが、とりあえずラオス暮らし3年目の上司に尋ねてみたところ、「あっ、それねえ・・・」といって答えを示してくれた。
音の正体はこいつだったんだけどちょっと待った!心臓の弱いひとは一回深呼吸してからクリックしてね。
というわけで色がけっこうどぎついものの、要するにヤモリだったらしい。どんな鳴き方をするのか、こちらで聴いてみてください。
最初に「ゲゲゲゲ・・・」ときたあとの鳴き声が、このヤモリの棲む東南アジアのひとびとには「トッケイ」と聞こえることから、トッケイヤモリというのだそう。
ヤモリだから人間への攻撃性や毒はないが、大きいものは大人の両手に乗るほどで、力がかなり強く、指などを噛まれるとケガすることもあるらしい。
「家守」としての役にはかなり立つ。ゴキブリどころかネズミだって食べるから。ただしサルモネラ菌を持っている場合があるので、遭遇したからといってほっぺすりすりとかはオススメできない。
我が家のトッケイ君は、おそらくあの動作感知器の下にある棚の裏にでも潜んでいて、わたしたちが寝静まったあと、邸内を巡回しているのかもしれない。夜更けに大声で鳴くのは、お前らの家のめんどうはちゃんと見てるからなというメッセージかもしれない。
東南アジアの暮らしが本格的になってきた。
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