ペンシルバニアに住むホイットニー・リー・アレンさんは、警察官である夫を失った。蜂に刺されてアナフィラキシー状態におちいり、心停止が20分間続いたせいで脳に深刻なダメージを受けた。ICUに収容されて6カ月、植物人間から復活する可能性なしと医師から伝えられたホイットニーさんは、夫の家族と相談した結果ホスピスに夫を移すという辛い決断をし、最後は静かに見送った。
夫が倒れたときホイットニーさんは二人目の子を身ごもっており、夫の入院中に出産。心身ともに厳しい時期を周囲のひとびとに支えられながら乗り切ったという。
世間がざわついたのは、ホイットニーさんが夫が亡くなった日に結婚指輪を外したと告白したときのこと。その理由を簡単な言葉で説明することは難しいので、できれば記事を読んでいただきたいのだが、ひとつには彼女にとって結婚とは「死がふたりを分かつまで」と誓った契約であり、夫の死により「この契約は果たされた」という感覚があったらしい。
ちょっとドライに過ぎやしないかって?この説明じたいが舌足らずなので、異論が噴出してしまうかもしれないが、彼女の感覚はわたしにも理解できる部分がある。新しい人生に力強く踏み出すためには自分にとってわかりやすいきっかけが必要・・・という感じだろうか。(ちなみに彼女は医療過誤を扱う弁護士として活動してきた関係で、ものごとをぴしぴしっと切り分けて考える習慣があるのかもしれない)
そうはいっても、ある日突然に伴侶を失くしたひとがただちに指輪を外すことはいないだろうが、彼女の場合、半年以上かけて「夫を亡くす準備」をするなかで、じっくりと踏ん切りをつけてきた結果なのだろう。
わたし自身は、妻に先立たれたとしても死ぬまで一緒にいたいので、指輪を外すという選択はないと思うが、まだ若く、子育てしながら人生を切り拓いていくホイットニーさんのようなひとたちは、まったく違うストーリーを必要としているだろう。
なおホイットニーさんは、夫が倒れてからの苦しみや悩みについてSNSを通じて発表するなかで、人生を一変させるような深い喪失感から立ち直るための社会的な仕組みが乏しいことに気づき、同じ苦しみを背負ったひとたちをサポートする活動をしている。
いろんな「なるほどね」があるストーリーだ。
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