Pennyと地球あっちこっち

日米カップルの国際転勤生活 ~ ただいまラオス

手首は糸ぐーるぐる

こういう風習は、世界中を探してもそうないのではないか。

ビエンチャンへ来て3週間がたち、生活が曲がりなりにも落ち着いてきたあたりで「バーシー」という儀式へのお呼びがかかった。

正式名称は「バーシー ・ スー ・ クワン」といい、結婚や出産、引っ越し、車の購入、新築祝いなど、人生の節目節目に健康と繁栄を祈る儀式だという。主催者は妻の上司で、新参者のわたしたちのためにバーシーを行うという。

上司宅を訪ねたら、すっかり準備が整っていた。花を団子状に連ねた塔と、その足元にはお供え物の菓子や果物。

出席者は、わたしたちと上司一家のほか、職場の現地スタッフ全員。花の塔はスタッフの手作り(ラオスの大人はこれができるらしい・・・が、もしかしたら女性の仕事かも)で、お供え物を盛る器も誰かの家から借りてきたものらしい。

全員が花の塔を取り囲んで座ると、シャーマンのようなおじさんがお経のような神道の祝詞(のりと)のようなものを詠唱し始めた。10分ほども続いただろうか、終盤、うおおおおい!という全員の掛け声が何度かかかり、それとともに花びらやお菓子や紙幣がバラバラと頭上に降り注ぐ。日本にもお菓子を投げる風習あるよね。

祝詞?が終わるとシャーマンが立ち上がり、花の塔からぶら下がっている白い木綿糸を30センチほど切り取り、わたしたち新参者の手首に巻きつける。ラオス語はわからないが、「体内から悪いものが出ていけ」と唱えながら手首に当てた糸を外側へ払い、続いて「良き精霊が宿りますように」と、今度は糸を内側へ払う仕草をし、最後に「あなたが健康で豊かに暮らし、家庭や仕事がうまく行きますように」的な呪文を唱えながら糸を手首に巻き付け、結んで終わり。

かと思ったら今度は参加者全員すなわち新参者を迎えるひと全員がひとりずつやってきては自己紹介し、思い思いの祈りの言葉を唱えながら糸を巻きつけていく。

妻とわたしの手首は糸ぐーるぐるで、3日以内に外すと効力が失せると注意された。結び目から先は切り落としてすっきりさせていいんだけどね。

なお、糸を結んでもらうたび食べ物を受け取ることが原則で、クラッカーだのゆで卵だのいろいろ頂戴しました。その場で食べてもよし、家に持ち帰るのもよし。

こんなチャーミングな儀式を見たことがない。ひとに対するラオス人の優しさと捉えることもできるが、同時に、コミュニティ内に波風が立つことを嫌い、互いを思いやる気持ちを伝えあうことで平穏を保つ術(すべ)なのではないか。

国土の80%が山林で、歴史的に外部からのひとの往来が少なかったラオスは、島国日本に似て「ムラの平穏」こそが豊かな暮らしの源泉だったことだろう。新参者を優しく迎え入れつつ、同時に「お前のことちゃんと見てるからな・・・」とやんわり釘を刺す高度なコミュニケーションがバーシーなのかも。という妄想はさておき、21世紀の都市部にあってもこういうのがしっかり行われていることに少なからず驚いた。ラオスはおもしろい。

花の塔はお持ち帰り可

そもそもこの儀式を上司がなぜ行おうと思ったのかというと、外向的でイベント好きな性格もあるが、転勤者が来たのにアレをやらないなんて人間としてあり得ねえ的な価値観が現地スタッフの間にあり、言ってみれば義務みたいな雰囲気があるのだそう。

ふるまわれたラオスめし

今回わたしたちは受ける側だったが、さしあたり来年以降に転勤していく上司との「お別れバーシー」の主催は、ただひとりの部下である妻になるだろう。となれば会場は我が家。基本的な要領はわかったので、あとはシャーマンの連絡先確保とか?

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