まずはストラスブールのホテルから。
Hôtel Sofitel Strasbourg Grande Île ソフィテル ストラスブール グランイレは五つ星なりの料金をしっかりとるが、立地のよさと接客の面でそれにふさわしい宿泊体験になると思う。
スタッフは仕事熱心で、たとえばチェックインのとき、駐車場で足を傷めた(と思ったが結果的には問題なかった)ペニーのために英語の通じる獣医の相談したところ、すぐにあちこちに電話して対応してくれるクリニックのリストを渡してくれた。
その後も追加情報を知らせてくれるなど、フロントスタッフの「役に立ちたい」という気持ちが伝わってきてうれしかった。ヨーロッパでこのレベルのサービスはなかなか体験できない。
パジャマのような廊下を通って部屋へ。
建物は現代建築だが結構な年数を経て微妙な時期を迎えており、メンテナンスを怠るとすぐにみじめな雰囲気になるだろう。部屋のドアを開けたとき、いきなりギイイイッと鳴ったのには驚いたが、こういうのはちゃんと手入れしたほうがいいと思う。
わたしたちの部屋はジュニアスイートというコンパクトな続き部屋で、広さに不満はなかった一方で、ソファやテーブルなどのくたびれが目につき、この点は五つ星としていかがなものかという感じ。
コロナによる減収で苦しんでいるのだろうし、それだったらしょうがない。
しばらく前のユーザーレビューでは浴室のソープ類がエルメスの小瓶だったのが、今回来てみたら格落ちのリフィルだったのもコロナのせいかもしれない。
そういう苦しさ(?)はあっても、部屋の掃除や補充はかなりしっかり行われおり、サービスの質は五つ星にふさわしいと思った。
朝食会場でもスタッフ全員がきびきびと動き回り、混み合う時間帯であってもテーブルがフル稼働し、料理の不足が出ぬようしっかり管理されていた。
ウエイトレスのひとりがアメリカ人だったこともあって話がはずみ、「絶品のジンジャーブレッド」の店を教わったのは楽しい体験だった。
このホテルの目の前に地味な教会が建っていて、なんとなく入ってみた。
名画や彫刻が観光客を呼び込むような教会ではなく、純粋に地元民のための場所という感じ。
素朴なタッチの壁画は経年劣化が目立つ。お金持ち教会だったら多額の費用をかけて修復するところ。
Saint Pierre le Jeune サンピエール・ル・ジュヌ教会といい、12世紀にここで始まったカトリック教会だったのが、のちにプロテスタントになった。
わたしはこの教会ぜんたいの「擦り減りぶり」をながめながら、着古した木綿シャツの心地よさに似たものを感じた。
カトリック教会にありがちな「こってこてに飾ったぞ恐れ入ったかひざまづいて祈れ祈れ」と迫ってくる感じでもなく、内装シンプルすぎるプロテスタント教会でハイ神と向き合ってくださいといわれる心もとなさでもない、不思議な温かさがここにはあった。
今ここで体の力を抜き、目を閉じてみたらどうなるだろう・・・
わたしはキリスト教徒ではないし、どちらかといえば無神論者に近いが、この世のどこかにある神性のようなものを感じてみようとすることがないわけではない。
そういう精神状態を穏やかに呼び起こす作用が、この教会にはあったと思う。
折あしく閉館直前、外では妻とペニーが待っており、写真を撮るだけで出てきてしまったが、この教会にはもう一度足を運んでみたい。
「そんなこと思ったの生まれて初めてなんだよねー」
妻に言ったら、私の前に内部を見学していた彼女はまったく同感だといって目を丸くした。
ヨーロッパの都市はどこへ行ってもナントカ大聖堂があり、この半年のあいだ怒涛の勢いでそれらを渡り歩くうち「お寺はお腹いっぱい」という気分になっていたのが、今回の教会との出会いはまったく別種だった。
わたしが宗教がかったひとになる可能性は限りなくゼロに近いが、自分の心の奥底とじっくり向き合ってみたいという衝動は大切にしたほうがいいのかもしれない。
フランスのストラスブールまで行かないとそれができないというのは困った話だけれども。
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