地図を見れば一目瞭然、この街は独仏国境にあり、それがためにとんでもない運命に翻弄されてきたのだが、それについてはあたらめて触れるとして、とりあえずストラスブール市内をぶらついてみよう。
トラムってほんとにいいよね。ヨーロッパはどこへ行ってもこれがあって、いちいち感動しなくなってはきたものの、トラムのある風景は大好き。
3泊4日の滞在中、一度だけクラシックな車両を見かけたことがあって、あれはちょっとラッキーだった。見ると良縁に恵まれたり金運爆上げしたりするんだって。ウソだけど。
街の中心に向かって進む。
クリスマス飾りがどんどん準備されていて、イルミネーションONになったら壮観だろうなあ・・・
と言ってたら、路地の向こうに壮観そのものの建物が姿を現わした。
泣く子も黙るストラスブール大聖堂は、高さ142メートル。
17世紀から19世紀までは世界一の高層建築だったこの教会は、高さだけでなく、重厚な塊(かたまり)感をもってのしかかってくるよう。
ストラスブール旧市街の観光は、だいたいがこの大聖堂を起点に行動する感じ。たいへんわかりやすいのだが、その概要は別の機会にゆずるとして、もうちょっとぶらぶらしてみよう。
この日(11月11日)のストラスブールの気温は最高7℃、最低ー1℃。ブリュッセルより5℃くらい低く、防寒靴を持ってきてほんとによかった。
それでもど根性のあるわたしたちは夕食を路上でとることに決めた。コロナの巨大な第2波に見舞われているこの国で、室内飲食はどうしても避けたかったから。
夕空が美しい街路に席をとり、注文した料理を待っているときにそれは起きた。
老齢の御婦人が足を止め、わたしの膝上でいい子にしているペニーを覗き込むようにして話しかけてきた。
「この子はなんという犬種かしら?」
何ゆうたはんのおばはん・・・
というフランス語力の私とは対照的にお尋ねの向きを即座に理解した妻が応じる。
「この子はミックスなんですよ」
もと野犬で、いろんな血が混ざっていることをかいつまんで説明すると、ご婦人は「あらそうだったのね」と言いながら少し落胆した様子。
ペニーを見かけて激しく気に入り、これと同じ子の購入をご希望なさったようだが、そうはいかなかった。
わたしはふたつのことを同時に考えていた。
1.おかあはんイヌはな、買うてくんのもいいが、保護犬(ほぼミックス)の線も忘れんといてな。
2.ペニーの可愛らしさは、もはやひとつの犬種として完成しているレヴェル。「ペニー犬」としてフランスでも認知を得たのであーる。
そんな妄想に浸っていたわたしが我に返ったのは、その場に居合わせたウエイターさんのひとことだった。
「ウイッ、オンリーワンのイヌですからね」
彼はわたしたちが来店した瞬間からペニーのことを気に入り、自身も4匹を飼うわんこ好きとして色々と気遣ってくれていた。
オンリーワン。そーなんだよ、ワンコは犬種とかミックスとかは関係なくみんな可愛いんだよ。
そのあと出てきた料理はちょい微妙な出来だったが、ペニーの魅力が見知らぬひとの心をとらえたことが嬉しく、上機嫌で食事を終えた。
親馬鹿ここに極まれり。
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