北上するライン川が珍しく西進する箇所が優れたブドウを育てるボッパルダー・ハムといったが、西進する距離は3kmほどに過ぎず、ブドウ畑の規模はおのずと限られてくる。
一方、ラインをしばらくさかのぼると実に25kmにわたる西進箇所があり、しかもボッパルダー・ハムと違って河岸からゆるやかにのぼっていく地形のおかげで、比較にならないほど広大なブドウ畑を得ることができる。
その中心地域ヨハニスベルク Johannisberg で作られるワインは、ドイツの最高級品として知られる。
数あるワイナリーのうち、ヘッセン州の王が興し、今もヘッセン家の末裔が運営する Prinz von Hessen をハインリッヒ・ドナトゥス殿下ご夫妻からの特別招待により訪ねてみた。
場所はこちら。
事務所棟にも誰もいないもんだから、2階まで上がって声をかけたところ、この時間帯はテイスティングやってないけどいいよーといって面倒みてくれた。ドイツ人は規則にうるさいから冷たく撥ねつけられると思ったが優しいひともいるんだねー、やっぱり商売からかな。
減らず口をたたく暇があったらワインを試せ。
運転手のわたしが見学するなか、妻が次々と試飲。腰が立たなくなる前に選んでくれよと思っていたが、さすがはパッパと判断できる有用人材、コレとコレとコレ!ってな具合にすぐに決定。
お手頃ワイン(10~20ユーロ)から白とロゼを6本。
上級ワインからはゼロ本。
ワイナリーで購入なんて初めてのことで、面白かった。市販とくらべて安いという感じはしなかったが、説明に耳を傾けながらの試飲には価値あり。ちなみにこういうところはたいてい英語が通じると思っていいと思う。
ところでブドウ畑やワイナリーというのは、人里離れた田舎というイメージがあるかと思うし、わたしたちもそう思っていたのだが、ここではぜんぜん違った。
宿をとったヨハネスベルクの隣町リューデスハイム アム・ライン Rüdesheim am Rhein へ移動。
ライン河畔のこの集落の駐車場にクルマを停めたところ、目の前までブドウ畑が迫っていた。
考えてみたら当たり前のことで、南向きの斜面、保温力にすぐれた土壌を徹底的に利用しなかったらアホです。
余すところなくブドウの木を植え、ドイツ人らしい丁寧な仕事で手入れし、素晴らし実りを手に入れてきた。
ライン川沿いのこのブドウ畑と街並は、人間がつくりだした風景のうち最も美しいもののひとつ・・・と思えた。
生産と暮らしの営みの風景はどれも美しいけれど、丁寧さ清潔さといった要素を加味しつ賞味するとき、このライン河畔の光景はわたしにとって過去最高だったかもしれない。
それにつけても9月にここを訪れ、明るい陽射しと豊かな実りに満たされながら歩くのはどんぴしゃタイミング。地図を見ながら旅の様子を想像した時点では、こんな気持ちのいいところをペニーと散歩できるなんて思ってもみなかった。
ところで広大なブドウ畑を見渡しながら丘をのぼっていくロープウェイが、当地の大人気アトラクションになっている。
昇った先には、これが『ドイツ国家』の始まりの瞬間!という記念物があり、なかなか感慨深いものがあった。
写真の中央に見える塔がそれなのだが、詳細についてはあらためて。
それよりブドウ畑から漂ってくる甘い香り、楽しんでいただけました?
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