散歩中、向こうからやってきたひとにペニーが吠えかかった。
ペニーは、相手がものかげから急に現れたときには軽くパニックして吠えることが多いが、そのときはなぜ吠えたのかわからなかった。
あっ、ごめんね!と詫びたら、相手はこう言った。
「だいじょぶですよ!原因はこれだと思うんです」
といって指差したのは、彼が引っ張っているキャリーケースだった。
「ん・・・?」
「車輪ですよ、車輪。わんこはけっこうこれが嫌いなんですね。うちの子もそう」
そのひとの言うところでは、大小いろんな車輪に反応するイヌが多いのだそうで、だからペニーを驚かせてゴメンネという実によくできた人物だった。
ちなみに出張でDCに来たエリートビジネスマンって感じの兄さんやった。
そういわれてみれば思い当たるところもある。
ワシントンDCエリアではレンタルスクーターが人気で、若い人たちだけでなくけっこうなおっさんおばさんがビュンビュンと行き交うのを目にする。
ペニーがこれが気に入らないようで、接近するスクーターに吠えがかることが多いのだが、主に反応しているのはタイヤという可能性もある。
そんなこと言ったらクルマが行き交う道路なんて歩けないじゃん?
グッドポイントやねえ。
保護犬の一時預かりをやっていたとき、南部の田舎から来た子でクルマの騒音にはげしく怯える子が何頭かいて、当時わたしたちは再開発の槌音にぎやかな地区に住んでいて、巨大ダンプが轟々と行き交うなかの散歩に往生こき、それが原因で静かな地区に住むボランティアさんに引き継いでもらったケースもあった。
その子の性格と暮らしていた環境にもよるが、クルマに弱い子はけっこういる。
だがしかしペニーさんはけっこう平気です。
3月に住んでいたアパート付近では、散歩コースからちょっと外れて土手を上ると、こんなふうになっていた。
バージニアからDCへとなだれこむハイウエイ。
目の前を時速100キロ前後で飛ばしていく車列は迫力満点だが、この場所でペニーがあたふたするのは見たことがない。
スピードが速すぎて意味がわからないのか、やっぱりクルマは平気なのか。
もろもろの体験を総合して考えると、ペニーは地面から伝わってくるゴロゴロ音が嫌いなのかもしれない。
スクーターやキャリーケースなどの小さな車輪が出す硬質なゴロゴロ音が、クルマとは違って神経に障りやすいという仮説。
こればっかりは避けきるわけににもいかず、飼い主としては向こうからキャリーケースが来たら道路を渡ってしまうなどの対応を心がけるくらいか。
車輪のことははておき、そもそもペニーがやたらに吠えかかるのは自信のなさのあらわれという説があるので、ブリュッセルへ行ったらそっち方面の取り組みを始めなくちゃと話し合っている。
クリニックの診察や旅行のときは一時的にクスリでスローダウンさせるとしても、普段の暮らしでリラックスしてもらうには、根本的な改善が必要だもんなあ。
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