Pennyと地球あっちこっち

日米カップルの国際転勤生活 ~ ただいまラオス

土壇場の決心

「人生とは、自分が何者であるかを見つける長い旅である」

というたのはフビライ・ハーンやったか、二丁目の田坂理髪店のおっちゃんやったか。

いずれにせよわたしの場合、自分が何者であるかに気付くまでえらい時間がかかり、いろんな人に迷惑をかけ、最後に妻と出会って自分の正体を知ることができた。

それまでに支払った代償が無駄だったとは決して思わないが、やはり人生というもの、自分の正体に気付くまでにあまり時間をかけすぎないほうがいいと思う。

 

以前、妻のもとでインターンをしていたB君は、国際転勤のある仕事をこころざした。

30代の彼は、若いころ軍務や旅行で世界各地を歩いた経験から、一生をコスモポリタンとして生きていくつもりでいた。国際転勤族にはそれなりの苦労があることは承知していたが、それは自分らしい生き方をするための手数料のようなものだと思っていた。

ただB君が希望した職場はハードルが高く、試験や身元調査をクリアするまでに何年かかかった。そのあいだの暮らしをたてるためB君は、雄大な自然で知られる北部モンタナ州で国立公園レンジャーの仕事についた。

そこには街育ちのB君が知らなかったゆったりとした暮らしがあり、最終的には結婚を約束する彼女もできた。

 

去年、粘り強く挑戦してきた就職試験にパスしたB君は、モンタナのアパートを引き払い、ワシントンDCで行われる研修に参加した。

まもなくB君の心身が変調を見せはじめた。

長く憧れてきた仕事につき、世界へ飛び立つときが来たというのに、なぜか心が浮かない。それどころか夜はろくに眠れず、鬱病患者のようにふさぎこみ、体が動かなくなってしまった。

B君は、急ブレーキがかかってしまった自分自身と向き合い、これからどうしたいのかについて考えた。

考えに考えた末にはっきりしたのは、今の自分が求めているものはコスモポリタンなどではなく、自然と人がゆったりと生きている田舎で、地に足の着いた暮らしをすることだった。

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試験にみごと合格し研修に入ったと聞いていたB君から突然の電話があり、妻が聞かされたのは以上のようなストーリーだった。

実はB君には「田舎か国際転勤か」という問題だけでなく、持って生まれた知覚過敏的なハンディとどう付き合っていくのかという課題もあり、総合的な判断としてのドロップアウトは妥当なものと思われた。

それでもB君にしてみれば、このチャンスを棒に振って本当にいいのかという不安があり、社会人のセンパイとして、またリファレンスチェックで世話になった妻への仁義を切る意味でも、相談をもちかけてきたのだろう。

「その判断、あなた自身にとって正解だと思うわよ」

妻からそう言われた翌朝、B君は人事担当者に連絡して退職の意思を伝えた。

 

B君の土壇場での決心が本当の本当に正解だったかどうかは神様しか知らないが、彼がそこまで深く自分と向き合って出した答えには一定の意味があるだろう。

難しい判断だったと思うが、「自分は何者なのか」という模索をしっかりやることで、彼は着実に最終解へと近づいていると思う。

わが身を振り返りつつ、30代でこれができているB君はエライと思う。

同時に、多彩なキャリアを積み重ねることが普通に行われているアメリカへのうらやましさもある。

ペニーだって棒投げ遊びでへとへとになったら立て直しの時間とるからねえ。

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きっもちええ、なんも言えねえ!

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