副反応騒動からようやく立ち直りはしたが、野菜を切ったりしてマトモな夕食の準備にとりかかるのが億劫だったので、近所のベトナム料理屋に注文を入れ、出来上がったころ受け取りに行った。
コンビニ袋をぶら下げてアパートへもどり、ガラス扉を電子キーで開けて入った。
レセプションの脇を通ってエレベーターに向かおうとしたとき、後ろから声がかかった。
「もしもし!あなた配達の人?!」
アパートを頻繁に出入りする出前配達人のひとりと思われたらしい。
かれらは電子キーがないからレセプションの人に合図して扉を開けてもらうんだけど、俺自分で入ってきたぜ?
だがレセプションのひとはわたしが入ってくるとき電話で話していて、目はこっちを向いていたように思うが、見てはいなかったのだろう。
たしかにコンビニ袋をぶらさげた姿は配達人ぽくもあり、「あら!いつの間に入ってきたのかしら」と慌てて声をかけたのに違いない。アパートの安全を守るための当然の行為であり、レセプションのひとはちゃんと仕事をしたわけだ。
わたしは「いいえ、ここの住人ですよ」と言い残してその場を離れたのだが、エレベーターを待つあいだに思ったことがある。
もしも自分が白人だったら、声はかけられなかったんじゃないか。
この地域で目にした範囲では、配達人はアフリカ系・ヒスパニック・アジア系ばかりで、ヨーロッパ出身者もいるにはいるが、ひと目で東欧からの移民とわかる容貌だったりする。
かくして「配達人は非白人」というステレオタイプが出来上がり、
1.白人だったら配達人でも咎められず入館
2.非白人の住民は呼び止められやすい
というパターンが生まれる・・・と考えたときのわたしの素直な気持ちを言おう。
ちょいムカついた。
このように感じることで、根拠なくいきなり犯罪者扱いされる黒人の怒りと悲しみがより身近なものになったような気がした。
わたしの場合はにっこり微笑んで電子キーを見せればステレオタイプからくる誤解から逃れることができるが、警察官を相手にした黒人には逃げ場がない。
BLM(ブラック・ライフズ・マター)運動のきっかけになったジョージ・フロイドさん殺害事件では、現在進行中の裁判に新たな映像が証拠として提出され、「わたしは悪者ではない」と訴えるフロイドさんが、危害を加えないよう警察官に懇願する様子が記録されていた。
これまでに示された証拠を見るかぎりこの事件は、警察官が「黒人は犯罪者」という圧倒的なステレオタイプに支配された結果ひきおこされたものだと思う。
フロイドさん事件を離れて、自分の生活に戻ってくると、わたしたちが大小のステレオタイプによる被害者であり、同時に加害者でもあることに今更ながら気づく。
わが身の醜悪さをあばくようでオッカナイから具体的に数え上げることはしないが、自分がやられてみなければ気付かない闇ってあるよね。
ベトナム料理だけど、レビューがとってもよかったので期待したんだが、味付けとコスパを考えるとちょっとアレな感じで、まあアメリカだったらしょうがないかと。
アジア飯、わけてもベトナム飯はうまい!というステレオタイプには該当しないケースもあるってことで、まあ勉強になりやした。
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