知り合いの開業医が、あるメーリングリストに悩みを書き綴った。
クリニックを開業してから10年ほどは「スタッフ全員が仲良し」で良好な職場だったものが、このところ急速に状況が悪化し、すぐにでも辞めたいというスタッフが続出する事態におちいったという。
退職希望者に詳しく事情を聞いたところ、職場の不和の主な原因は若手とベテランの衝突、そこに正社員とパートという立場の違いがからんで、かなり煮詰まった状態にあることがわかってきた。
よくある話やね。
なお、スタッフは全員が女性で、院長は男性。
院長は従業員間のそうした摩擦にまったく気づいておらず、青天の霹靂の思いであったという。
雇用者として至らなかったことをスタッフ全員に詫び、退職希望者に対しては職場環境の向上を約束して、何人かには思いとどまってもらうことができたのだがイヤハヤ・・・という悩みだった。
言うまでもなく、容易に一件落着するような問題ではないだろう。
スタッフ間の人間関係の悪化にまったく気づいてこなかった院長が、どうやって「職場環境を向上」させるのか、ハードルは高いと思う。
院長は、女性の思考回路は理解不能という空気をにじませつつ「頑張る」といっているのだが、肝心なところで履き違えをしているんじゃないかとわたしは心配している。
それは彼が文中で繰り返し使う「正社員の娘(こ)」「一番若い娘」「あんなにいい娘たちだったのに」という言葉。
むかしむかしの職場は確かにこんなもんでした。女性はすべて「女の娘」であり、能力・経歴関係なく半人前として扱うことが(ごく少数の例外をのぞき)普通だった。
こまかいことは省くが、そういう昭和なセンスで女性従業員と向き合っているかぎり、院長がほんとうに職場を掌握することは難しいのではないか。
この院長、学生時代から存じ上げているが、真面目一本、明るく丁寧に人と接するナイスガイであり、誰に対しても横暴な態度に出てくるような人物ではない。
それだけに何のためらいもない様子で繰り返される「おんなの娘」よばわりが残念に思われてならなかった。
ただ、詳しい事情を知らないわたしがそういう角度から突っ込みを入れることは憚られるため、「がんばってくださいね」としか返しようがなかったわけだが。
ところで、この「おんなの娘」呼ばわりはどこから来たものかと首をひねった。
開業前の院長は20年たらず勤務医をしていたが、その病院では女性スタッフは「おんなの娘」だったのか。あるいは看護師ですらそう呼ばれていたのか。その病院固有の現象だったのか、医学界に広く見られるものなのか。
しろうとが勝手に飛躍して考えるべきことではないが、看護師の地位の低さの背景には、こうした価値観もあるのでないか。
(国により制度が違うから単純比較できないが、アメリカの看護師の年収は日本の2倍、3倍ということが珍しくない)
いろいろ辛いことがあっても人助けに力を尽くす看護師さんはじめ医療従事者への敬意をこめて書いてみた。
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