衝突した日航機の貨物室に預けられていたペット2匹が犠牲になった件が報じられ、キャビンへのペットの同伴について検討すべきではとの声が報じられると、賛否両論がネット上に展開した。
とはいえペット同伴を求める声はごく一部にすぎず、圧倒的大多数がこれを否定しているだけでなく、同伴派を激しく攻撃する書き込みがけっこうある。どうしてそんなに感情的になるのかわたしにはよくわからないが、それはさておき、両派の主張の例をここに転載する。(太字 オットー)
サニーカミヤ(元レスキュー隊員/日本防災教育訓練センター 代表理事)
ペット同伴搭乗も検討すべき。 動物には命があり、感情、痛み、苦しみも感じる。火炎と黒煙が迫る貨物室に閉じ込められたペット達が、どれだけ熱く、苦しかったか感じてみて欲しい。 新幹線や各鉄道会社等の公共交通機関では、車内にペット同伴搭乗が可能であるのに、なぜ、航空機内にはペット同伴搭乗できないのか? 航空機は、約3分で機内の空気がすべて入れ替わり、循環している空気は高性能なフィルター(HEPAフィルター)を通して極めて清潔な状態に保っており、動物アレルギーのアレルゲンとなる毛やフケも室内や特定の場所に滞留することはなく、乗客が前を向いて着席するため、ペットが飼い主のそばのケージ内に居れば、他の乗客の迷惑になることも考えにくい。 人と動物の共生する社会の実現を図ることを目的に1973年に制定された「動物の愛護及び管理に関する法律」があるが、第1〜3条を多くの人に読んでいただきたい。
以下はわたしが思ったこと。
1)世界にはキャビン同伴が可能な航空会社がいくつもあるなかで、日本のキャリアはすべて認めていない。
2)キャビン同伴といってもペットの体格に制限があり、通常ケージ込みで7kgほどがリミット。ネコはたいてい収まるが、イヌはチワワなどかなり小さくないと同伴できない。
3)キャビン同伴のせいで他の乗客にアレルギー症状が出たなどのトラブルについて、個人的には聞いたことがない。
4)わたし自身は、転勤によるアメリカ-ブリュッセル往復をキャビン同伴で飛ぶことができた「受益者」として、日本の航空会社もキャビン同伴させてくれることを願っている。
だが日本では以前から、鳴き声やアレルギーを理由とする反対意見が大半を占めており、わたしは「ないだろな」と思ってきた。
それに加えて今回は、日航機からの奇跡の脱出劇が注目されるなか、ペット同伴賛成派にとってかなり厳しい意見が出ている。仮にキャビン同伴を認めたとして、今回のような緊急脱出になった場合、「荷物はいっさい持つな、だがペットのケージはOK」という特別扱いが通用するのかという問題提起。これは厳しい問いだ。
もしかして数年先には「ペットは家族同然なのだから」特例として認めてあげればという機運が生じる可能性ゼロとはいえないが、それもやっぱり厳しいかなあ。それは、ペットの飼い主とそうでないひとたちの価値観にかなりのズレがあるように見えるから。
たとえば下記の意見。
動物を連れて飛行機に乗る時点でこういう事故が起こることを考えておくべきですね。 残念ながらペットは人間と離れて預けられるんですから。 こういう事態を避けたいのなら連れて行かないことが一番です。 『寂しい思いするだろうから』と沖縄旅行するのに飼い犬を連れて行った友人がいますが、見ず知らずの貨物室で飼い主と離れてなにが起きてるのか分からず数時間フライトする方が、ペットホテル利用するよりもかわいそう。
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まず個人的な印象として、このひとはペットの飼い主ではないように思われる。キャビン同伴という選択肢については無視したうえで、貨物室に入れて不安な思いをさせるのなら連れて行かなければいい=ペットホテルのほうがましとおっしゃるのだが、ペットの心身の事情、飼い主との関係は「十匹十色」であり、置いて行けばいいと単純に切り分けられるものではない。ペットが「かわいそう」と同情されても、どこがどう可哀想なのか、話が噛み合ってこないような気がする。
もうひとつ、同伴反対派(あるいは同伴という選択肢を無視してかかる派)の主張を聞いていて感じたことは、日本人の冷たさみたいなことだった。表現が難しいんだけど、たとえば
「ペットが家族だかなんだか知らないが、自分の満足感のために世間に負担かけてんじゃねえよ」的な。
たしかにペット持ちは社会のマイノリティーだ。だが人間にはそれぞれの生き方、しあわせの形があり、価値観の相違はあっても互いに尊重しあうのが優しい社会であり、最近の日本ではそういう雰囲気が薄れてきているような気もする。
キャビン同伴の件は個人的にさして期待しているわけではなく、反対派のおっしゃることに頷ける点も多く、なるようにしかならないと静観中。今いちばん強く思っているのは、攻撃的な言葉が飛び交う日本という空間について。いつ何をきっかけに優しい社会に向かって変化していくのだろう。
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