Pennyと地球あっちこっち

日米カップルの国際転勤生活 ~ ただいまラオス

衝撃の不人気

バンコクに着いた翌日、妻は街のある風景を見て驚いた。誰も立ち止まらないのだ・・・

と言われてピンとくるのはタイ在住の方々だけかもしれないので、カンタンに説明。

タイでは鉄道駅など公共の場所で朝夕2回、スピーカーから国歌が流れてくる。演奏が始まった瞬間、すべての通行人がぴたりと足を止め、気をつけの姿勢で国歌に耳を傾ける。もしもそうしなかったら、国家と国王に対する不敬罪でタイホされても(けっこう重い刑罰が用意されている)文句が言えないのがタイ社会。

実際、現在の国王が即位した2019年にバンコクへ行ったときは、国家が鳴りはじめた瞬間ひとびとがぴたりと動きを止めて気をつけの姿勢をとり、わたしたち外国人も思わずその真似をしたものだ。

ところが2023年のバンコクは違った。午後6時、鳴りはじめた国歌に、妻は「そら来た!」と足を止めたが、周囲のタイ人は素知らぬ顔で歩き回っている。気をつけをして、片手を胸に当てているひとなど、見渡した範囲ではひとりもいない。「そりゃ衝撃的な光景だったわよ」と振り返る妻。

この激変ぶりはどういうことか。思い当たるのは現国王の不人気。一年の大半をドイツのリゾートホテルで過ごし、側室を牢屋にぶちこんだと思えばいつの間にか開放しーの、以前は政府の承認が必要だった王室費の使途を国王が好きなようにできる法律を作りーの、軍の最上位にある組織を自分の直属にしちゃいーのと、わが身の重さの演出にはきわめて熱心なのだが、その姿をタイ国民はずいぶんしらけた目で見ているらしい(ここまでいろいろあったよね)。

タイ王室はこれからどうなるのか。不敬罪を始めとする法律に守られている存在だから、世論がどっと盛り上がって廃止なんてことは起きないだろうが、公に批判することすら許されない社会だからこそ、溜まりに溜まった不満が何かをきっかけに噴き出したとき、そのエネルギーはたいへんなものになるだろう。

わたしが小中学生だったころ、教壇では日教組の闘士たちが「天皇こそが人間の不平等の象徴(だから万民が平等なソ連や中国が正解)」と声高らかに主張していたものだが、自由な世界ってほんとにいいもんだね。戦後の皇室にとって時代の逆風は強かったが、不敬罪とかいって守らなかったから今でもしっかり生きながらえている(女系天皇はまだしも女性天皇など絶対認めない男系原理主義者のおかげで生物学的には絶滅寸前だが)。

バンコクの昼下がり

とにかくタイは、ここ数年のあいだにもメキメキと豊かになっており、しょぼくれが目立つ日本より数倍も元気に見える部分があるほど。暮らしが変われば心も変わる。そんな激動の時代にこういう国王が出てくるってのは、歴史のイタズラなんだろうかね。

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