ハマスは最悪の選択をした。イスラエル領内に踏み込んで無抵抗の村びとを何百人と撃ち殺しただけでなく、幼児までも拉致して人質にした。国際社会の大半が(一部のクセのある国々をのぞき)全面的にイスラエルの味方をしている。世界にはもうハマスの味方などいなくなったといっていい。
ハマスの愚かな行為は厳しく断罪されるべきものとして、こうなってしまった原因を考えると、やはりそこにはイスラエルによるパレスチナ住民への長年の仕打ちがあったと言わざるを得ない。
イスラエルはパレスチナ人を武力でもって「西岸地区」と「ガザ」に押し込め、とくにガザは人口過密で環境劣悪、まともな産業が興るわけもなく貧しく、イスラエル側へ働きに出ようにも、事あるごとに検問所を閉鎖してはパレスチナ人の移動を止め、電気や水道を止め、食品・医療品など生活必需品の流れをブロックするという「ムチ」を数えきれないほど振るわれてきた。
それは単に経済や暮らしの問題には留まらなかった。ある時期、検問所のイスラエル兵は、パレスチナ女性の身体検査をするのに生理用ナプキンまで外させていた。そこまでして発見できる武器などあろうはずもなく、これはパレスチナ人から人間としての尊厳を奪うことが目的だったとしか考えられない。
それに似た陰湿ないじめをイスラエルは何十年もやってきた。窮したパレスチナ人が抵抗運動やテロ行為に走れば世界のメディアがこれを伝えるが、イスラエルによる日々のいじめ行為などいちいちニュースにするメディアはない。それをいいことにイスラエルがやりたい放題を重ねてきたことはまぎれもない事実だ。
メシを食うのもやっと、そのうえあらゆる方法で尊厳を傷つけられた末、捨て鉢にならない人間がいるだろうか。そのうえ昨今の世界情勢を見ながらパレスチナ人は ―― 少なくともハマス指導者は、ロシアによるウクライナ侵略すなわち「力による現状変更」を今度はイスラエルが真似するのではないかと恐れはじめたかもしれない。
また、アラブ世界の盟主ともいえるサウジアラビアがイスラエルとの国交正常化めざして動き出しており、そうなればパレスチナの後ろ盾が消えるのではないかと恐れ、俺たちを置いていかないでくれ!と大声をあげたくなったのかもしれない。
それにしてもこんな喧嘩の吹っかけ方をして味方を失ったハマスは、パレスチナ人居住区はどうなるのか。過激なユダヤ教保守主義者であるネタニヤフ首相の日頃の言動からは、パレスチナ人を「ユダヤの土地」から完全に追い出したいという野望が明確に見て取れる。そのネタニヤフにとって今回のハマスの暴発は待ちに待ったチャンスといえるのではないか。
本日(10月13日金曜日)、イスラエル軍はガザ北部の住民110万人が24時間以内に南部へ退避するよう求めたと伝えられた。ハマス掃討作戦を展開するためだというが、今後ハマスがどうなろうと、110万人が住みかへ戻れると考えるのは大甘な判断だろう。イスラエルはなんだかんだと理由をつけて、ガザ北部への帰還を許さないだろう。
ガザは摺り潰されるようにして消滅するかもしれない。住民はどこへ行くのか。砂漠を歩いてエジプトに逃れるか、地中海へこぼれ落ちるか、いずれにせよネタニヤフにしていれば願ったり叶ったりだろう。
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