アムステルダムから電車で12分行ったところにハールレムという街がある。ハールレムと聞いておや?と思ったあなたは鋭い。ニューヨークのハーレム地区の名の由来になった街だ。マンハッタン島に最初に入植したヨーロッパ人はオランダ人で(もちろん先住民を追い出して)、そのうちの有力者がハールレム出身だったためか、その名が地名になった。
オランダへもどると、ハールレムといえばチューリップといわれるほど、この地域はチューリップ生産が盛んで、少し郊外に出るとこんなふうになっている。
いうまでもなくチューリップは季節ものであり、いつ行ってもこういうのが見られるわけではない。ベストシーズンは4月末から5月はじめ。わたしたちはドンピシャのタイミングで訪ねたことになる。
広大なチューリップ畑の農道を貸し自転車で駆け回ることもできるが、この日は風が強くてそういう気になれなかった。その代わりここにはキューケンコフ公園というフラワーパークがあり、いうまでもなくこの季節はチューリップが主役。
オランダへ行ったらぜひ一度チューリップまみれになってみたい・・・そんな願いは昔からあったが、季節を合わせてということになるとなかなか難しい。ようやく来られた喜びが体のなかで膨れ上がり、花の絨毯の上に身を投げたくなる。
それにしてもチューリップって種類いろいろあるんやな。色ばかりじゃなく、形もさまざま。
17世紀オランダで「人類発のバブル経済」と呼ばれるチューリップの熱狂が起きた背景には、工夫すればしただけ新しい色や形が生まれてくる面白さがあったんじゃないか。
デジカメだからいくら撮っても大丈夫だが、フィルム時代だったら残り枚数と現像代が気になって思う存分撮影できなかっただろう。
チューリップは単純な形に清潔感を感じられるところが好きだったが、こうして見ると陽気にぶっ壊れた感じの花も可愛らしい。
さて、この公園を歩きまわりながら気づいたことがある。それはチューリップをはじめとする花々がひっじょおおおに美しく感じられる理由だ。
上の写真にも下の写真にも、花をとびきり美しく見せる秘訣が込められているんだけど、お気づき?
答えは芝生。ぴっちりと敷き詰められ、傷も汚れもない芝生は、それだけでメルヘンの世界をつくりだせるほど美しかった。これだけの舞台装置に花々が映えて、この空間を特別なものにしている。
芝生のメンテナンスには膨大な手間と費用がかかっているに違いないが、そこに一切の妥協を許さないところが一流の公園たる所以(ゆえん)ではないか。
この特別な空間に集ったひとびとは、誰もが表情やわらかく、静かにウキウキしているように見えた。もちろんわたしたちもそうだった。
世の中にはいろんな贅沢があるけれど、春のオランダで花の極楽ってのは、お金で買えるレベルをはるかに超えた贅沢。そんな気もしてきたのだった。
ベタな結論だけど、この季節にオランダへ行くひとにはキューケンコフ公園とその周囲に広がるガチのチューリップ畑を是非おすすめしたい。ちなみにハールレムは、派手さはないが古くて渋い街並みが人気で、ライデンより魅力的というひとも多いようだ。
オランダには何度も来ているが、チューリップのど真ん中を堪能するなんて夢のまた夢と思っていたので、今回はほんとにうれしかった。
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