ペニー連れで立ち寄ることの多い公園に、一匹のわんこが住み着いている。
いつも毛布にくるまってじっとしており、この子が動くところをわたしは見たことがない。
わんこには飼い主がいて、そのひとはホームレスの中年男性である。
彼は一日の多くを40メートル四方ほどの公園内をぐるぐる回りながら過ごしている。
なにやらつぶやいたり、時おり即興詩を詠みあげるかのような朗々たる声をあげたりしながらゆっくり歩く姿は、精神活動とからだを温めるための運動を兼ねているいるようにも見える。
夜になると近くのビルの軒下で眠り、昼間を公園ですごす暮らしを、ホームレス支援の若者が支えており、日に1回かそれ以上やってきては、食べ物や防寒具などを手渡している。
そのときの会話を耳にして、かれらが英語で話していることに気づいた。
ベルギーの公用語であるフランス語やフラマン語(=ほぼオランダ語)を使っていないから、ホームレス氏は外国人のはず。ブロークンな英語のなまりからしてイタリアとかそっち方面の出身かもしれない。
公園に集まる他のホームレスのひとたちや支援者と話すとき、いつも笑顔を見せて陽性な雰囲気の彼だが、心の奥底はどうなっているのか。
母国語が通じない空の下でホームレス暮らし。
もしかしたらベルギー国籍もなく、公的な支援を受けにくい立場かもしれない。
体を壊したらどうするのか。
彼の境涯を想像しながら、それを我が身に置き換えてみたら、すーっと気分が重くなった。
自分は孤独に強いほうじゃないし、難局の突破力もたいしたことなく、こんなところでホームレスになったら生きていけないと思う。
公園のホームレス氏にしてあげられることはあるか。
普段から「ボンジュール!」と軽く挨拶する程度のあいだがらだが、それだけに突然お金を差し出すというのも難しいところがあり(←場数踏んでないのアリアリ)、さりとてわんこの健康も気になるしで、態度を決めかねている。
冬至が過ぎ、短くなる一方だった日がこれからはじわじわと伸びていく。
全室暖房のアパートにぬくぬくと暮らす身は、たまの外出で寒さを楽しむところがあるけれど、公園のだれかさんは春の到来を心から願っていることだろう。
季節のうつろいは正確で残酷です。
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