妻の発案で玄関にペニーのものを揃えた。
こういうアイテムはごちゃごちゃになりやすく、箱から取り出すのもめんどくさかったりするものだが、今回すっきりできてよかった。
便利というだけでなく、妻の目にはこれが自分たちの親馬鹿ぶりと映って可笑しかったらしく、出来上がりを見ながらケタケタ笑っていた。以前ここにぶら下がっていたわたしたちの防寒着が別のところに片付けられてしまったくらいで、お犬さまがお通りでぇいの家であることは確か。
そんなペニーさまの散歩に出た今朝のこと。
雨のなか、スーパーの脇にしゃがみこんでいる中年女性を見かけた。
ぱんぱんに膨らんだエコバッグ3個と大きなゴミ袋2個を抱くようにしている姿は、ホームレスと見て間違いないだろう。顔色悪く、雨に濡れて弱り切った様子。わたしは首からぶら下げた財布に急いで手をやったが、つい最近小銭を使ってしまったことを思い出す。たった一枚入っているお札は10ユーロ(1300円)で、思えばあのときそれを差し出してしまえばよかった。
だが現実のわたしは(10ユーロ、ちと多すぎやな)と考えて女性の前を通り過ぎ、小銭がありそうな自宅への道を急いだ。お察しのとおり、家をさがしまわったが小銭も小額紙幣も見つからず。
しまった・・・
ひとつ方法があった。スーパーでなにか買い物をすれば10ユーロ札をくずすことができる。大急ぎで現場に戻ったが、すでに女性の姿はなかった。体力を温存するため地下鉄の通路に避難したのかと思い、階段を駆け下りる。
だがそこにもいない。途中ですれ違った3人組の警備員に咎められて出ていったのかもしれない。界隈をしばらく歩いてみたが、ついに女性の姿を見ることはなかった。
結果論ながら、たった数ユーロのちがいに躊躇した自分が阿呆に思えた。
こういうことで必要以上に自分を責めるマゾ体質ではないが、やっぱり自分は誤っていたという気がしてならない。
イヌでさえ帰る家と有り余る食料があるというのに、救いを求めるひとを前にして「お札をくずしてから」ってどんだけさもしいのか・・・
ペニーの柔らかな毛を撫でながら、気まずい思いがつのった。
これが世間の不条理だなんて半世紀以上も前から知ってるよ。だけど気持ち悪いものは気持ち悪いってことで。
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