ドイツはラインガウワインの名産地リューデスハイム アム・ラインで重度アル中患者のごとく酒を買いあさっていたわけではなく、ちゃんとメシも食ったし寝もしたし、それはそれでライン川沿いの旅としてはなかなかよかったのだが、その話をする前にブドウ畑の上を滑空するロープウェイで丘の頂上へ行ってみよう。
地上にいるときとはおもむきのちがう新鮮な光景。ブドウ畑って、なんでこんなに美しいんだろう。
ライン川の河岸段丘、南向きの斜面には畑がつらなり、北向き斜面には市街地が広がる。これぞドイツっていう風景なんやろな・・・
というふうに考える「ドイツ」という国家はいつできたのかといえば、わたしたちは大した知識をもっておらず、昔はプロイセンなんて国があったけどって程度。
そのプロイセン王国は今のドイツの北半分が領土で、南半分は別の国々(バーデン大公国やバイエルン王国など)が治めていた。
19世紀の終わりころ、プロイセンとフランスとの間で戦争が始まり(普仏戦争)、プロイセンは南ドイツ諸侯と同盟を結んで戦い、フランスを撃退。
この勝利を受け、「ゲルマン民族は団結して守るべし」という機運が高まり、プロイセンを親玉とするドイツ帝国が誕生。これが現在わたしたちがドイツといっているものの原型。
で、丘のてっぺんにはドイツ帝国の誕生を記念するモニュメントがそそり立っている。
一番上が「ゲルマニア」という、ドイツ国家またはドイツ民族全体を擬人化した像で、女性の姿をしている。王様は男ばっかりだが、ほんとにえらいのが誰なのかドイツ人はわかってたんかね。
中段の群衆は、プロイセンのウィルヘルム1世を中心に、諸侯や軍人が団結している様子。
ドイツ誕生の瞬間をこうして祝したわけだが、20世紀に入るとこの地域を占領したフランス軍がモニュメントの破壊を計画したり、第二次大戦中には空爆を受けて破損したりといった浮き沈みがあり、そういうのをなんとか乗り越えてきたゲルマニア像ということで、現代ドイツ人にとってもたいそう意義あるものらしい。
えーだってお前らさあ・・・という話はさておき、ヨーロッパという地続きの世界にあって民族が領地や文化を守る苦労を感じる材料としてはなかなかのものだと思った。
おれら日本人には国境というものの有難味と悲しみを感じるセンスないからねえ・・・
という面白体験をさせてもらったリューデスハイム アム・ラインの街は、小さいけれど味わいがあり、ライン川沿いの旅では是非立ち寄ってみたい場所のひとつ。
坂は多いが険しいわけではなく、歩きやすい。時節柄もあってかシニア層の客が多かった。
この街のど真ん中にある Hotel Lindenwirt ホテル・リンデンヴィルトを利用してみたのは、そういう立地の宿がどんなものか興味があったから。
結論からいえば、建物が古いぶん防音ができておらず、階下のレストランのピアノや、通りをうろつく観光客の立てる物音が夜遅くまで聞こえた。
それ以外は水まわりがしっかり改装されていることなど、ちゃんとしたホテルという印象。
ワインの大樽の中で眠る部屋があり、たいそう人気があるそうな。
わんこ連れであることを事前に伝えておいたら、食器が用意されていた(ペット料金7.5ユーロ)。
有難くはあったが、敷き布についたドッグフードやわんこのにおいが気になってペニーは落ち着かなかった。
夕食は Ratsstube(ラットシュトゥーベ=評議会会議所)という不思議な名前のレストラン。
レビューの高評価を見て入ってみたところ、期待を裏切らない美味しさで、そのせいか周辺の店と比べて客入りがよかった。
ドイツ料理は定番のシュニッツェルで「腕がわかる」などと知ったふうな口をききながら注文。さっくさくのポテトフライと合わせて美味しかった。
妻はニンジンとジャガイモをマッシュした不思議な料理に挑戦。
ここの料理はどれも味付けが控えめで、ドイツといえば甘いもしょっぱいもコッテコテという既成概念を打ち破る洗練度。
食事中、テーブルぎりぎりに列車(スタイルの自動車)が通り過ぎていく。
歩くより遅いから怖くはなく、乗客と笑顔を交わす余裕あり。
これに乗って街なかをぐるぐる回れるのだから、年寄にとっても子供にとってもやさしい仕掛け。
乗り方知らんけど、リューデスハイム アム・ラインに来たら試してみてね!
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