夕方の散歩に出ようとしたら、パトカーだらけだった。
まず、隣のホテルとの間の敷地に2台。
いったいなんじゃいと首をひねりながら通りへ出たら、隣ホテルの玄関付近を固めるようにパトカー2台、白バイ6台が配置されている。
警察官は、ざっと見渡しただけでも14名。そのうちホテル玄関前を金剛力士像さながらに固める2名は、これみよがしにマシンガンを抱えており、それにちらりと目をやっただけのわたしを強烈に睨んできた。
あたりには普段は見かけない黒塗り高級車が数台待機しており、だれかトテツもなくえらいひとが来ているのは確実と思われる。
外国の首脳とか。
ただ、ホテルはとりたてて高級というのではなく、若いバックパッカーをよく見かけるレベル。
YOUは何しにこんなところへ?
という疑問を妻に話したら、さすがにそっち方面の事情には明るいらしく、隣のホテルに来ているのは外国の首脳なんかじゃなく、もっとありきたりなひとじゃないかという。
「ベルギーはね、各国の大使クラスにも手厚い警護をつけてるのよ」
へえ~。
日本でも、外国の首脳には手厚い警護をつけるが、これに似たことがベルギー駐在の大使どのにも行われているというのだ。
大使というのは国家元首の代理をつとめる形式上きわめて格式高い立場ではあるけれど、実際問題としてブリュッセルにいる百何十人かの大使にいちいち厳重警備つけてたらお巡りさんどれだけいても足りないんじゃ。
その理由はやぱりテロじゃないかな。
ブリュッセルでは2016年に空港と地下鉄の連続爆破テロが起き、「イスラム国」が犯行声明を出している。
同じ年、バングラデシュの首都ダッカでもイスラム過激派によるテロ事件(日本人7人をふくむ20人の民間人が死亡)があり、それいらい各国のダッカ駐在員は厳しい警備体制のなかで暮らしている。
ブリュッセルにはそのような厳しさはないが、アメリカ政府は駐在員にとってのテロ警戒レベルを高く設定しており、十分に気をつけろボーっと生きてんじゃねえぞというレクチャーを受けた。
そんななかで、大使レベルのVIPについている手厚い警護。
隣のホテルの件は昨日のことだが、今日の夕方になっても同じ警備が続いている。どんだけ居続けとんねん。
その様子を横目に見ながらペニーの散歩に出たところ、にわかにサイレンの音が近づいてきて、パトカーに先導された外交官ナンバー車が風のごとく通り過ぎる。
白バイの機種はBMW。うちのほうに駐機しているのはYAMAHA製ってのはどうでもいい情報だが、ブリュッセルの道路は石畳が多く、雨がちで滑りやすいから白バイ警官もたいへん。
卑怯なことをするやつらのせいで、無数の善良なる市民・公務員がさまざまな苦労をしている。
こういうのを見ると、日本ほど平和な先進国はないとあらためて思うし、そのぶん日本人の世界観は良くも悪くもズレているのにちがないとも思うのである。
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