コロナのせいで何もかもが変なことになっている。
渋谷で一番高級とされているセルリアンタワー東急ホテルの、エグゼクティブフロアの客室がだよ、とんでもないバーゲンプライスになっていた。
値段はさておき、どんな部屋かというと・・・
インテリアやアメニティ類は周辺のホテルと比べて明らかにワンランク上。
枕元のライトが左右対称でないところなんか、静かにカッコイイ。
エグゼクティブフロアは32階以上で、景色も見ごたえあり。
わたしたちが入った部屋からは、遠くに東京タワーと東京湾くらいしか見えず、これといってインパクトないけれど、タワマン住みの「選ばれしものたち」は毎日こういうのを見下ろしながら暮らしているのかという社会勉強にはなる。
ちなみに35階のエグゼクティブラウンジは西向きで、丹沢から秩父の山塊と、その向こうに富士山を望むことができてご機嫌。
このたび、こんなホテルに激しくお得な料金で泊まることができた。
ひとつには妻が得意とする前日・当日までじっと待ち続けて最終プライスをゲットする戦法、それに加えて hotels.com のポイント爆弾が奏功した部分もあるが、それ以前に市場価格として十分に安かった。
いったい何が起きているのか。
ここでちょっとエグゼクティブフロアのことを忘れ、セルリアンの「普通の部屋」と、近所の渋谷エクセルホテル東急を比べてみよう。エクセルはビジホに毛が生えた程度のグレードだ。わたしたちが予約した2月末時点の値段を比べると、
■ セルリアンの普通の部屋 213ドル
■ エクセルのそこそこいい部屋 250ドル
両者の部屋の広さや質感を考えれば、この価格は完全な逆転現象。
なぜこんなことになったのか。
しろうとの想像だが、観光需要が落ち込んだ今、渋谷のホテルはビジネス客に頼っている。仕事で泊まるひとは渋谷駅からえんやら坂道を上った先にある高級セルリアンよりは、駅ビル(渋谷マークシティ)にあって足の便のいいエクセルを選ぶのではないか。
理由はともかく、値段の点でセルリアンがエクセルに「負ける」という下克上が起きている。
わたしたちが泊まったエグゼクティブルームは、普段ならおひとりさま400ドルを軽く超えるところ、今回はふたりで350ドルにすぎなかった。
そこまでダンピングすると、舞台裏の事情はかなり苦しいのに違いない。
たとえば朝食は、対応するスタッフの数を減らしたせいで、客が同時間帯に集中するとサービスが滞るため、バラけるように誘導される。
「あいにく7時台は混んでおりまして、できましたら遅めのお時間のほうが・・・あ、10時でございますか承知いたしましたっ」という具合で、前の晩のうちに時間を決めるようきっちりツメてくる。
そこまでは理解できた。苦しいなかでがんばっておられる。
だが食事の内容には大きな疑問符がついた。
わたしたちのプランについてきた朝食は、税別3000~3500円相当のものだったので、内容には多少の期待をしていたのだが、出てきたものを見てがっかり。
たとえば「アメリカンブレックファースト」は、卵料理のバリエーションが乏しく、目玉焼き・ゆで卵・スクランブル・プレーンオムレツからしか選べない。
エッグベネディクトまでは要求しないが、ポーチドエッグもないなんで国際的には高級ホテルとして見てもらえない。
また、サラダなんて最低限ついてくるものかと思ったら、ヨーグルトとコーンフレークの3点から選ばなければ食べることができず、しかも出てきた皿は子供用かというほど小さかった。
これはもう受け入れることができない。
料理の質にも問題を感じた。わたしたちは遅い時間帯を選んだのだが、出てきたスクランブルエッグは表面がパサパサしており、朝一番の作り置きをチンして出してきた感満載。
人数を絞らざるを得ない事情には深く同情するが、「高級」を名乗るかぎり、やっていいことと悪いことがあると思う(調理したてのやつがパサパサだったのなら調理業務の質を再点検すべきでは)。
ついでに触れておこう。エグゼクティブラウンジで提供される「アフタヌーンティー」もかなり貧相だった。
たとえば同価格帯で検討していたた品川のインターコンチでは本格的なスイーツを提供しているのと比べ、セルリアンでは微妙なものが数点あるきりで、見るからにわびしい風景だった。
たまたまインターコンチを引き合いに出したが、経営環境や対応のしかたはホテルによりけりであり、単純にセルリアンが劣っていると言いたいわけではない。
ただ、セルリアンの経営陣は、高級ホテルとは何かということについて今一度考えてみてはどうかという気はする。
たまたまエグゼクティブフロアに泊まれちゃったパンピーに言われたかないだろうが、そういうこった。
コロナでたいへんななか、従業員一丸となって頑張っておられることはよく感じられた。
底力を発揮してこの難局を乗り切っていただきたい。
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