残念ながらわたしはグリーンカードを持つのみで、納税者ではあるが選挙権がないため、世紀の政治ドラマに参加することができない。
というか、この狂ったアメリカを救うための一票を投ずることができない。
そのジクジたる思いを背負ったかたちで、妻が期日前投票に行ってきた。
そのとき投票所で「アメリカの希望」を見ることができたという。
それは民主党でも共和党でもない、選挙ボランティアの人たちのこと。
写真の中央付近で案内板をもつ女性をはじめ、訪れた有権者の世話を焼くボランティアが大勢いた。
かれらの多くはまだ英語がつたなく、おそらく移民一世。中南米系のほか、北欧系とおぼしき人もいる。
いずれもチャンスの国アメリカに賭けてここへやってきたのに違なく、この国によりよい未来をもたらすためにはスムーズな選挙が不可欠と信じてこの役割を志願したのだろう。
こうした風景にアメリカの民主主義の分厚さを感じると同時に、悲しさがこみあげてくる。
それは、今回の選挙の行く末に、南北戦争に次ぐアメリカの惨事が待っているような気がするからだ。
トランプは、11月3日の投票日の時点で勝っていても、郵便投票の開票結果によって負ける可能性があるわけだが、そうなったとしてもトランプは郵便投票の不正を叫んでホワイトハウスに居座り、泥沼に突入する懸念がある。
これはもう国連の選挙監視団が必要なレベル。アメリカは先進国だと思ってたんだけどね。
もちろん、すったもんだの末にバイデン大統領が誕生する可能性もあるわけだが、トランプは「不正選挙」を叫ぶことで新大統領の正当性を否定し続けるだろう。
信者はトランプを殉教者として祭り上げ、熱狂し、アメリカの分断をさらに深めるだろう。
へたをすれば先日トランプから「待機せよ」といわれて大喜びの白人至上主義団体が湧きだして大小の暴動を引き起こすかもしれない。
ちなみに本日の報道によれば、ミシガン州のウィットマー知事(民主党)を拉致し、議事堂を襲撃して州政府の転覆を計画していた過激派メンバーをFBIが逮捕した。南米やアフリカでも珍しいこんな乱暴な企てが21世紀のアメリカで行われていることを、わたしたちは直視しなければならない。
このように、トランプは落選してもアメリカに災厄をもたらす存在だが、たったひとつの希望はある。
いま現在、現職大統領だからこそ免れている山ほどの訴追を、民間人となったトランプは雨あられと浴び、どれだけ薄汚い人物なのかが白日のもとに晒されることで、アイコン(偶像)としての価値は下落するにちがいない。
トランプ信者のうちでもコアな層は完全な思考停止におちいったゾンビだから、トランプに有罪判決が100回下っても意に介さないかもしれないが、覚めるひとも少なくないだろう。
焼け跡に日が差し、アメリカに正気がもどっていく道筋を、わたしは「次なる希望」として心待ちにしている。
われながらここまで悲観的な気分になるとは驚きだが。
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