妻の同僚で近所に退避しているひとが、床屋で被害にあった。
何十ドルか払ってこれである。
バリカンもろくに使えないやつが理容師を名乗るなどおそらく日本ではあり得ない現象だがここはアメリカなんでも起きる。
で、悪いけどわたしたちは送られてきた写真を見て爆笑。
翌日、うちもそろそろまた切りどきだねえと言いながら妻がハサミを取り出してきた。
床屋セットを買い込み、妻が生まれて初めて他人の髪を切ったのは6月のことだった。
そのときの上首尾については別のところに書いたので割愛するが、要するにまったくシロートとは思えない出来であった。
「あんときよりもさ、ぐっと短くできる?」
という私の要望に、短くするほど腕の悪さが露呈しやすいのではと自信なげな妻。
「ええんやでーどうせ外出は必ず帽子やから」
という励ましに苦笑いを返しながらカットが始まった。
前回はテンパーくりっくりの髪を乾いたまま切ったが、今回は趣向を変え、濡らしてブローして伸ばしてみた。
長さが見やすく切りやすいだろうという配慮だったが、逆によくわかんないかもと不安げな妻。
おまけに後頭部から切りはじめるやいなや溜息をつく。
「あ、あれえ、ミスったかも」
「ぐっちゃぐちゃになったらゴメン・・・」
てなこといいながらチョキチョキ、30分たったところで作業が終了した。
襟足まだだけどと言いながら撮ってくれたのがこれ。
前回よりも短くという注文は、妻にとってはまったく別の作業を意味していたと思うが、すっきりとまとめてくれた。
「完全に床屋を超えたな!アメリカじゃ」
という私の歓声に気をよくした妻が、わりと真面目な声音で言った。
「転職しよっかな」
今の職場で働くことは長年の目標だったし、彼女は実にいい仕事をしていると思うが、現在の赴任先に問題がありすぎるせいで、この仕事そのものに愛想を尽かす寸前までいっている。
そういう文脈のなかで考えれば、妻が床屋になる話、あながち冗談ともいえない響きがある。
もしもそうなったとき、小生は髪結いの亭主で左うちわするのか、日曜大工で鍛えた腕を床屋向きに改変してふたりで店に立つのか、それも悪くないと妄想するお盆の昼下がり。
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