その晩のペニーは、散歩中のトイレがはかどらず、同行者を困らせていた。
詳述すべきことではないが、小はするのに大は・・・という状態。
それでも活発に歩き回りはするので、いい運動になると思って歩かせていたら、ペニーさん、いつもはあまり行かない方向へどんどん進んでいく。
ふだんは路上の落下物や他のわんこに気をとられて始終きょろきょろしているのに、なぜかこの晩は任務を帯びた兵隊さんのようにまっすぐに進んでいく。
滅多に通らない交差点が20メートル先に見えてきたとき、そこには奇妙な光景が。
大型のゴミ箱に上半身を突っ込むようにして中身をあさる中年女性がいた。
ホームレスさんかと思ったが、こざっぱりした服装とわんこ連れであることを見れば、その可能性はごく低い。
なにか困っているのかもしれないが、人通りの絶えた路上で近づいていき声かけるってのもナンだし・・・
わたしはショートカットして帰宅するため脇の公園へ入っていった。
暗い公園を歩き始めてすぐ、後ろから声がかかった。
「すいません!携帯電話お持ちじゃないですか?」
さっきの女性だった。
聞けば彼女はわんこの落としもの袋をゴミ箱に捨てたとき、あやまってマンションの鍵を一緒に放り込んでしまったのだという。
わりとアルアルやね、そういうの。探すのにライトがいるんやね?
よっしゃまかしとき!
ってんでスマホ点灯、ゴミ箱を覗き込んだが、溜まったゴミの下に入り込んでしまったのか、鍵は見当たらない。
しかたがないので、ゴミのうちまだしも綺麗そうに見えるペットボトルを1本つまみ上げ、それを使って他のゴミをかきわけてみる。
ふだんでも二の足を踏む行為が、このご時世では数倍つらかったが、家の鍵を失くすしんどさはよくわかるから、しばらく頑張ってみた。
結局鍵は見つからず、彼女の移動経路をたどってみることに。
暗い公園を這いずるように中腰でうろつく男女(笑)
それでもなかなか見つからず、最後にあきらめかけたとき、彼女が思っていたルートとは数メートル離れたところにキラリと光るものあり、無事に発見とあいなった。
「ほんとにありがとう、こんなに親切にしてもらえるなんて。ほんとにほんとに助かったわ、あなたはなんていい人なんでsh・・・」
スマホのライトを貸しただけで身に余る謝辞をちょうだいしてしまったが、まあシチュエーションを考えれば彼女の助かった感はかなり強かったかもしれない。
てかほんとに感謝すべき相手はペニーだったな。ふだんは行かない方面へわたしを連れてきたんだから。
「だからいっちばん高いおやつでも買ってあげてよ」というジョークが頭をよぎったが、失礼にならずにそれを言うだけの英語力がないわたしは静かに挨拶してその場を去った。
この件では、功労者がもうひとりいる。
それは散歩中いつも首にかけている消毒アルコール。
家の鍵やわんこ訓練用クリッカーと一緒にぶら下げ、ちょこちょこと使っている。
今回、綺麗そうに見えるペットボトルをつまみ上げるときには勇気が要ったが、あとで消毒すればなんとかなるやろ!と思い切った。
あの女性の手にもドバっとかけてあげたらすごく喜んでいた。
アルコールとペニーのおかげで思わぬ社会貢献?ができた。
ありがとねー。
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