Pennyと地球あっちこっち

日米カップルの国際転勤生活 ~ ただいまラオス

「馬鹿ムスコ」の本当の罪

首相公邸で忘年会、赤絨毯の階段で記念写真の岸田翔太郎氏(以下、ムスコ)が首相秘書官職を辞することになった。

「こともあろうに首相公邸で」と庶民の憤激を買ったムスコ殿だが、こんなのは取るに足らない小ネタ。だってさ、公邸での飲み食いに招かれたひとなんて過去にいくらでもいるだろうし、そんとき「おお、あの赤階段」で記念撮影なんて定番コースにちがいない。そのせいで国政が停滞するわけじゃなし、騒ぐ必要はない。

そんなことよりムスコの問題は、首相側近でありながら日本外交の停滞をもたらした愚行にある。ご存じのように1月、首相外遊に随行したムスコは、パリやロンドンで日本大使館の公用車を観光や買い物のために乗り回したと伝えられた。この件について首相はウヤムヤを決め込んでいるが、はっきり否定してこないということは事実なのだろう。

この件の真の問題は、ムスコが大使館車両を私用に使ったことではなく、大使館員をアテンドさせたことにある。日本政府関係者から「クルマを出せ」といわれたとき、大使館が車両だけ貸すなどということはあり得ず、必ず誰かをアテンドさせる。運転手はたいてい現地雇いで言葉が通じにくいうえ、安全管理のうえでも大使館員を同行させる必要があるからだ。

ところが首相外遊先の大使館というのは、現地政府との調整(高次の政策からメシの段取りなどあらゆる雑事まで)、日本政府の独自行事の準備、随行してくるメディアの面倒見などのため何週間も前から多忙を極めており、大使館員は上から下までヘトヘトになりながら本番を迎えている。

そこへ脳天気な首相側近なんぞがやってきて「クルマ出してくんね?うん、あさって丸一日」なんて言われたら、大使館員ぶち切れ間違いなし。伸びきった戦線から無理矢理ひとりを引っぺがして観光のアテンドをさせたぶん、外交舞台で絶え間なく発生し続けるトラブルの処理能力は確実に落ちる。このことを日本外交の停滞と多少大袈裟に前述した。

公邸の宴会やら記念撮影やらが何の実害もないスカスカのネタである一方、大使館公用車で観光三昧というのはそれほど罪が重いことなのだと、日本のメディアはなぜ伝えないのか。大使館の事情や外交の舞台裏なんて知ったこっちゃない?それより宴会や記念撮影は〈不適切な悪ノリ〉だと根拠レスな倫理観をふりかざして騒ぐほうが楽だから?庶民感覚になんか寄り添ってくれなくていいから、何が問題なのかについてしっかり伝えてくれ。

こっちはお仕事中のオヤジ殿

ついでながら大使館というのはどこの国も似たようなものだと思うが、国会の会期が終わるなり議員のセンセイ方がどっと海外視察に繰り出し、行き先の大使館に世話をさせている。〇〇政策関連の見学先を見繕ってアポ入れといてね、先方の大臣や議員と会談したいから誰か見繕ってアポ入れといてね、メシも食うからアポ入れといてね(もちろんナイスなお土産買える店も用意しといてね)からの空港お迎え、視察アテンド、急な予定変更への対応やらで大使館員はへとへとになるらしい。

そういうのは大使館の通常業務だから誰も文句は言わないが、ムスコの公用車問題はパリかロンドンの大使館員がぶち切れてリークしたんじゃないかと想像され。ネタが明るみに出るのがやたらに早かったし。

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