Pennyと地球あっちこっち

日米カップルの国際転勤生活 ~ ただいまラオス

脱出成功

どう書いたらいいのか頭の整理がつかぬまま、ともかくパソコンを開いてみた。

結論というか、ブリュッセル脱出には辛くも成功し、今はワシントンDCの近郊にいる。出発までの数日間におきたことを思い返すにつけ、激しい焦りと怒りが噴き出してきて、アメリカに来て3日目のきょう、ようやく何かを書く気になった。

ブリュッセルからの出発予定が日曜だったので、妻の職場での転勤手続きは金曜いっぱいに済ませる必要があった。

手続きのうち最も重要なのは航空券の発券で、これがなければどこへも行けない。何日か前に旅行業者がフライトを仮押さえしていたが、米国政府から転勤の正式な辞令が下りないかぎり発券はできない。

そこを狙って悪魔が攻撃を仕掛けてきた。

出発3日前の木曜、ワシントンDCの本省から正式辞令が届き、それをもとに発券手続きのハンコを押すのが悪魔の仕事だったのだが、悪魔は発券申請の「書式が整っていない」とかなんとかデタラメをいって押印を拒否。いったいどうするつもりなのか想像がつかない。

もうひとつ、妻は直属の部下であるローカルスタッフ2名の人事評価を書くことになっており、その期限は2週間ほど先だったのでアメリカに行ってから作成することにしていたところ、悪魔が突然にその件を持ち出し「今日提出」と命令してきた。妻は引越し準備の修羅場でパソコンを広げて必死に書き上げ、貴重な3時間がそれに費やされた。

これだけやれば悪魔も気が済んだろうと思ったのが甘かった。

翌金曜の朝、今度は総務担当から連絡が来て、あなたは〇〇と〇〇と〇〇が済んでいないからブリュッセル離任の許可を出すわけにいかないという。

それらはケーブルTVや携帯電話の解約といった用件で、離任以前にやるといろいろな不便が発生しがちだし、そもそも料金の支払いは月末の〆を待たないと不可能といった事情があるため、事後に同僚などの助けを借りて済ませることが一般的。

ところが今回にかぎり四角四面なことを言ってきたのは、総務担当が悪魔のマブダチだからに違いない。悪魔の意を受けてイジメにかかってきているやつを相手に「でも普段はぁ」などと食い下がったところでどうにかなるわけもなく、わたしたちは携帯電話会社にすっ飛んでいくなどしてまた時間を浪費。

それだけではない。異動にともなう山ほどの事務手続きは総務の助けなしには済まされないが、スタッフ全員に悪魔の毒がまわっている様子で、誰もが最低限の情報を渋々わたしてくれるだけ、事がスムーズに進むようちょっと気を利かせて手伝ってくれるなどという現象は皆無といってよかった。人間の親切などというものは、これほど簡単に吹き飛ぶものなんだね。

引越し準備の遅れは不眠不休で取り返すとしても、最大の問題は発券が行われるかどうかだった。悪魔の狙いが時間ぎりぎりの金曜夕方までイジメ抜くことであればそれでいいが(ちっともよかないが)、本気で潰しにかかってきているのであれば問題が深刻すぎる。

不安と焦りにさいなまれ、怒りで爆発するのを抑え抑えしながら、妻は悪魔一味の要求に必死に応じていた。木曜から金曜にかけ、食べ物はろくに喉を通らず、肌は荒れ、目の下にひどい隈。くちびるを震わせながらこう言った。

あたし、これ以上なんかあったらもう辞める・・・

考えてみれば、ここまで気を確かにして頑張りとおし、降ってわいた用件を着実に片付けてきた彼女の能力は、わたしなど足元にもおよぶものではない。オレだったらとっくのむかしにブチ切れて F**k You! している。

わたしなりにストレスを感じ、金曜朝は吐き気のせいで眠れず、ふらふらしながらペニーの散歩に出たんだが、例によってこちらの精神状態を感知してか、彼女は歩く意欲を欠き、どうにかおしっこはしてくれたが、朝には必ずある便通がなかった。

苦労かけるのう・・・

不愉快な話の第一部はこれくらいにしておこう(続きあんのかよ?!)。

航空券はリミットぎりぎり金曜の夕方になって発券され、土曜一日をかけて引越し準備、掃除を済ませて家を出たのがの出発日の午前1時半。

それから空港に向かい、空港隣接のホテルで手荷物の整理(23kg×4個)。3時間ほど眠れる計算だったが、悪魔によるほんとの最終攻撃の懸念、余裕ないなかで自分たちが犯しているかもしれないとんでもミス(例:アメリカ入国に必要なグリーンカードどこに入れたか思い出せねえ・・・まさか引っ越し荷物に紛れ込んでる?!)なんてことを考えるとろくに眠れず、ユナイテッド航空951便の座席についたときには人間の皮をかぶったゾンビ(←普通はそう)になっていた。

なお、悪魔の妨害工作により仮に出発が1日遅れになったとしよう。その日はベルギー全土で物価高に抗議するストライキが起きており、ブリュッセル空港からの出発便はすべてキャンセルされたという。

もしもそんな目に遭っていたら拙者、ブリュッセルにとって返し悪魔をズンバラリまっぷたつに断ち割ってやるところだったが、そうせずに済んだのはせめてもの幸運だったと思っておきたい。

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