先月末、ようやく新しい職場での仕事が始まったのと同時に、妻が急いでスタートを切った件がある。それは来年の職場探し。
すでに何度かここで触れたが、彼女の転勤先は人事部から降ってくるものではなく、自分で見つけなければならない。まず世界中の任地のうち 、自分の専門分野と職員等級に空席あるところを見つけて自分を売り込む。企業でいえばブラジル支店で営業課長クラスを求めているところへ入社3年目の経理担当が応募してもね~みたいな。
希望者は、任地の仕事や暮らしの実情についてツテをたどって調べる → 売り込みの書類を送る → 電話インタビューを経て採用が決まる。
言うまでもなく人気の高いところほど競争率が高い。第一にヨーロッパ。おしゃれな暮らしができるうえ、あそこで経験を積んだひとほど出世しやすいという旧態依然な省内風潮にあって、人気ぴかいち。第二に日本を筆頭とするアジア地域は、安全とメシの美味しさが魅力(中国は今いろいろありすぎてアレになっちゃったけど)。
そのほか中南米大好きなスペイン語使いがラテンアメリカばかりを転々とするパターンもあるが、アメリカの国益を大きく左右する存在ではないぶん仕事に重みが足りないつーか物好きクラブみたいな位置づけなんつったら叱られるかな。
この職探しレース、いちおう9月にスタートを切ることになっているが、実際には何か月も前から駆け回って情報収集と運動に励まないと、最適の任地には巡り合えない。
ところが妻の場合、現在の職場が正式に決まるまでは来年の就職運動を始めることができず、ようやくスタートを切ったころには、たいがいの職員が多い人では10件を超える応募を済ませ、電話インタビューをどんどんこなしていた。この時期になって初めて応募なんて、事情を知らないひとから「なにふざけてんのオマエ」とか言われてもしょうがない。
そんなわけで重いハンデを背負って参戦した職探しレース。行先についてわたしは特に要望することはないが、ペニーはそうでもないはずだ。
たとえばイヌの入国に極めて厳しい国(太平洋の小さな島国やオーストラリアなど)は、どれほど魅力的な職場があっても対象外。それを言うなら日本のハードルも飛びぬけて高いけど、まあこれは例外かな。今んとこ日本赴任はないと思うが。
妻の奮闘ぶりを横目に見ながら思ったのは、この役所の人事制度がどれほど本来業務の停滞を招いているかということ。転勤先を自分で決める方式には民主的でよろしい面がある一方、何千という職員が就職活動にかけるエネルギーと時間の総量はすごいことになっていると思う。とくに「どんなことをしてでもパリかロンドンへ行きたい!」みたいなネバっこいひとたちは、この時期仕事に手がつかないんじゃないのか、そしてエラくなるのはそういうひとたちばかりという社会の現実。
そういえばブリュッセルの悪魔も転勤シーズンを迎えており、とんでもなく高い地位へのジャンプアップを狙って活動中との噂を耳にした。だれかが捨て身で「桜田門外の変・無血版」でも起こさぬかぎり、モンスターの進撃は止められない?
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