Pennyと地球あっちこっち

日米カップルの国際転勤生活 ~ ただいまラオス

koroすのに刃物は

それは、とてもヤバい電話だった。

民泊の清掃スタッフから、「床暖房、壊れてるみたいっす」という、軽いが致命的な一言が届いた。

ここは寒冷地である。1月ともなると、終日氷点下という日も珍しくない。しかもこの時期は、台湾、シンガポール、タイ、インドネシアなど、年中あったかい国からのお客さんが多い。

寒さ耐性ゼロの人類が集結する季節。

エアコンはある。あるにはあるが、足元の冷えには弱い。冬の快適さは、最終的に床暖房が支配している。

外気温7℃、床暖房リビングルームは20℃

この家は「冬でもTシャツ一枚で過ごせます」が売りだった。

それなのに——

民泊を殺すのに刃物はいらない。床暖房を一つ壊せばいい。

慌てて電気屋さんに来てもらったところ、なぜかその時に限ってユカダン君は元気いっぱいに稼働していた。

「……ちゃんと動いてますね」

家電あるある。具合が悪いと訴えると、急にシャキッとするやつ。

とはいえ、導入から17年のユカダン君。本格的にお亡くなりになった場合の話も聞いておこう。

「床暖房を入れ替えるとなると、床をめくるので……200……いや、300万円ですね」

ない。

.....ない。

300万円は、ずぇったいにない。

「代わりの暖房は?」

「そうですねぇ…… 寒冷地仕様のエアコンに総取っ換えが正解でしょう」

今ついている普通のエアコンは、外気温がマイナス5℃以下になると、がんばっているフリだけして実際には空気を温められなくなるらしい。

「そうですか…… ちなみに、この家、エアコン5台あるんですが交換費用は?」

「うーん、ざっと100万円ってところでしょうか」

100万円……。

去年エコキュートで大金を払って、ようやく黒字が見えてきたところなのに、ここでまた100万円。

わたしが儲けちゃいけない法律でもあるのだろうか。

後ろ向きなこちらの空気を察してか、電気屋さんが畳みかけてくる。

「実は来年度から省エネ基準が厳しくなりまして、エアコンの価格が50〜100%上がる予定なんです」

つまり、

今なら、100万円

4月以降は、150万〜200万円

「なので、やるなら早いうちが…… 機材の手配かけますよ」

「あ……し、審議にかけますぅ……」

電話を切ったあと、虚脱感が胸を覆う。

ただ、ひとつだけ引っかかっている。

「外気温がマイナス5℃以下になると暖まらない」と言われたが、うちのエアコン、本当にそんなにヘタレだっただろうか。記憶では、ちゃんと働いていた気がする。寒い日は寒いなりに、健気に暖気を吐いていたはずだ。

スタッフさんに確認してもらおう。

「つべてえですぜ」と言われたら、そのときは覚悟を決めて、また電気屋さんに電話しよう。

それにしても——

100万円、どこかに落ちてないかな。

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