オスカーの飼い犬としての強みは、人間が大好きなこと。銃で撃たれたといってもオスカーはそれが人間のせいだとは思っておらず(破裂音には強く反応するが)、人間に対してまっすぐに心を開いてくる。ペニーが野球帽をかぶった男性を怖がり、わたしたちと打ち解けるのに時間がかかったのと比べて、ずいぶん生きるのが楽そう。
その意味では誰もが飼いやすい子であり、もしもペニーと同居したら、「人間にはもっと甘えていいんだよ」と身をもって伝えられるかもしれず、そうなればみんなが幸せ。
オスカーと暮らすための準備についていろいろ考えた。前脚への負担を減らすため、フローリングは今よりもっとカーペットで覆ってしまおう。階段もすべてカーペット敷き。あるいはオスカー用のスロープを取り付けようか。ソファやベッド用のステップは必需品。庭での散歩はヘビを警戒してリード付きにしているが、二匹だと大変なので、目が届く範囲を柵で囲って自家製ドッグランに・・・
いま思いつく範囲ではそれなりのことができると思うが、やはりラオスへの移動からはじまる健康リスクをどうしても否定しきることができなかった。特にラオスでは獣医師のレベルに大きな疑問符がつく。
また、わたしたちに何かあって誰かの手にオスカー(とペニー)を託そうにも、障害のある子はハードルが高いだろう。発展途上国であればなおさらだ。わたしたちは Yes と No のあいだを百万遍行き来したあげく、オスカーのことをあきらめた。
だが、これでオスカーと二度と会えなくなったわけではなかった。義妹がオスカーを育てることになった。もともとはラオスへの輸出入の手続きが済むまでの預かりを相談しており、義妹宅のギニーピッグと仲良くできるかをチェックしたり、オスカーと遊んだりするうち、実はかなり気に入ってくれていたらしい。義妹家族は以前から「そろそろイヌと暮らしたいね」と話し合ってきており、気持ちの準備はできていたらしい。
シェルターで手続きをしてからオスカーの新居へ。ドッグフード、トリート、ベッド、ケージ、ブラシ、たくさんのオモチャとともに引き渡した。
これからは6人家族と賑やかに暮らすんだよ!うちよかよっぽど楽しいよ!
そう心で呼びかけながら写真一枚撮るのが精一杯。オスカーの心を乱さないようにそっと家を出る。あとを頼むよと妹に話しながら妻の涙が止まらない。わたしも精神崩壊寸前でクルマに駆け込んだ。
そういうわけでオスカーとの10日間の暮らしは終わった。喪失感は想像していた以上で、今でも唇が震えるほどだが、あれは最高の結末だったのだと繰り返し自分に言い聞かせている。
ペニーのお友達さがしはこれからも続けていくつもり。
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