ロサンゼルスで不法移民排除への抵抗運動が起き、軍が派遣される騒動にまで発展するなか、日本では「法律破りの連中が偉そうに権利を主張しやがって」という声がネット上にあふれている。
ごもっとも。でもその考え方はアメリカでは必ずしも通用しない。まずこの国の実情はといえば・・・
◆ 不法移民の排除・取り締まり派
「ルールを守って合法的に移民してきた人々に対して不公平」「治安の悪化や福祉制度の圧迫につながる」などの理由から、不法移民の存在を問題視している。
トランプ政権ではこれが顕著に表れ、「壁を作る」「不法移民を犯罪者と同視する」などの強硬政策が支持を集めた。
特にラストベルト(中西部)や南部など、経済的な不安や白人の相対的地位低下を感じる層からの反発が強く、不法移民がスケープゴートとして扱われることも。
◆ 寛容・擁護派
アメリカは移民国家であり、「夢を追う人々」を受け入れてきた国という建国理念に基づき、不法であっても「人間としての尊厳」が守られるべきとする価値観が根強く存在する。
特にDACA(幼少期に不法入国した子どもたちの保護制度)などに見られるように、本人に責任のない若者や、アメリカ社会に根を張って生きている人々を排除するのは非人道的とする意見が多い。
現実問題として、農業、飲食、清掃、介護、建設といった低賃金の肉体労働は不法移民によって支えられており、排除すれば経済や地域社会が機能しなくなるという懸念も共有されている。
◆ そういうわけで
こうしたアメリカの価値観は、日本のように不法滞在を厳しく取り締まり、「在留資格がなければ即退去」という法秩序重視の社会では理解しにくいが、アメリカでは移民の人権、背景事情、歴史的役割に重きを置き「違法行為は問題だが、全面排除には反対」という米国民が多数派を占めてきた。
現政権の強硬策に対して批判的な声が根強いのも、こうした複雑な事情を背景にしているといえるのではなかろうか。
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