ストレスを発散するため、ひとは何をするのか。
散歩。
うまいものを食う。
好きなジャンルの本を読む。
手芸や書道に没頭する。
最近は古民家DIYに没頭なんてのもある。無心で薪割りに集中すれば暮らしの役にも立つわけで、なんだかいいなあ。
わたしは20代のとき、仕事のない週末はバイクで奥多摩や神奈川の山道に向かうことが多かった。丹沢山系にあるヤビツ峠には何度か行った。
未舗装道路をそこそこのスピードで駆けた。通行車がほとんどなく、いい感じで走れるものの、怪我をしても誰も助けてくれない。そういう緊張感あればこそバイクのコントロールに集中し、そのほかの一切を頭から締め出していた。葛飾区の公団アパートに帰りつくと、長く苦しんでいたモヤモヤが噓のように消え去っていることに気づいた。
わたしを苦しめていたモヤモヤは、仕事のストレスだった。憧れの職業だったのに思ったようには結果が出せず、オレ全然向いてねえ・・・という劣等感にさいなまれる毎日。定例の企画会議の前夜には、朝までに天変地異が起きて東京が壊滅すること(でも自分は無事)を心の底から願うトホホなやつだった。
あるときバイク雑誌で目にした林道ツーリングの体験記に触発され、行ってみることにした。
この写真のようにカッコイイものじゃなく、友達から5000円で買ったボロボロのホンダ、革製ジャケットの代わりにぺらぺらのジャンバー、ブーツじゃなくてゴム長を履いた貧乏ライダー。月給11万円だったからねえ。
わたしは林道ツーリングをやってみて初めて、自分が重症のストレスに苛まれていたことに気づいた。敏腕ではないからハイレヴェルなストレスじゃなく、仕事ができなさすぎて苦しむほうのストレスだが、ストレスに貴賤はない。とにかくわたしは苦しかった。
だが当時のわたしは、それがいわゆるストレスによるものという自覚がまったくなかった。ストレスってのはリポビタンDとかを売りたい企業がつくりだした幻想みたいなもんだと思っていた。世間はストレスストレスとまるで被害者みたいに騒いでいると。
ところがヤビツ峠でバイクの操縦に没頭したあとの爽快感を体験することで、自分がストレス漬けになっていたことがコロリと理解できた。そうかといってわたしの職業的能力が向上したわけではなく、果てしない苦しみが将来にわたって続いていくわけだが、それはまた別の話。
林道ツーリングによって少しは救われたダメリーマン。あのときのような大きなバイクではなく、原付に毛の生えた程度のちっちゃなやつでトコトコ林道を走ってみたいものだと思い始めている。ストレス解消じゃないよ、バイクは楽しい。現時点では実現可能性ゼロだけどね。
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