ペニーのおなかはピンク色。
生後6か月(推定)でうちへ来たとき、彼女のピンク色のおなかを見て「まだベイビーちゃんだねー」と目を細めたものだが、その後2~3年して黒っぽい部分が増え、あららオトナになったのねと言っていたら、いつの間にかまたピンクに。
へそ天して日向ぼっこするペニーの幸せそうな姿を見ながら、思い出したことがある。小中学生のころ親戚に飼われていたシロという犬のこと。
シロはしじゅうキャンキャンと吠えていた。どこで吠えていたのかというと、それは薄暗い土間だった。
長細い町屋には、真ん中あたりに明り取りの土間が作られていることが多い。ゴミ箱が置かれ、サイダーやビール瓶の箱が積み上げられ、シロはその脇につながれていた。狭くて直射日光なんか入って来ない、人間との接触もない孤独な空間。
トイレのための最低限の散歩はさせてもらっていたようだが、それ以外の時間は息のつまるような場所に閉じ込められ、ストレスを溜めるばかりの毎日だったのにちがいない。
今にして思えば、シロはいったい何のために飼われていたのか。番犬にもならず、家族と楽しく過ごす愛玩犬にもなれず、ただキャンキャンと吠えるだけの一生。今のわたしがそれを見たら激しく胸を痛め「なんとかしなくちゃ・・・」と思うところだが、犬と暮らしたことのなかったわたしは、シロの吠え声におびえて土間の脇をそそくさと通り過ぎるだけだった。
シロは何を食べていたのだろう。ドッグフードとかいう時代でなかったことは確かで、おぼろげな記憶では味噌汁ぶっかけメシみたいなものが中心だったと思う。塩分過多、玉ねぎ、そのほか犬の健康を害するものをじゃんじゃん食わせていたんじゃないか。
シロは何歳まで生きたのか。そして何より、生まれてから死ぬまで幸せを感じたことはあったのか。あのとき何もできなかった自分の痛みとして思い出すのである。
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