Pennyと地球あっちこっち

日米カップルの国際転勤生活 ~ ただいまラオス

おっかない酒屋

最初にアメリカで暮らし始めてから15年目だというのに、知らないことがたくさんあって面白い。驚いたことに、アメリカではまだ禁酒法が生きている。さすがに飲酒は禁止されていないものの、あの時代のなごりとして酒の販売が規制されているのだ。

先日のノルマンディ旅行で何度か楽しんだカルバドス(リンゴからつくる蒸留酒)を、酒飲みでもないくせに妻が欲しがったため、ABCストアと呼ばれる店へ行った。

ABC: Alcoholic Beverage Control とは州のアルコール飲料規制局のこと。バージニアで蒸留酒を売っていいのは、州直営もしくは販売ライセンスをもつ業者のABCストアしかない(ビールやワインなど醸造酒はスーパーなどで買える)

なんでそんなことになっているのかについて知る前に、とりあえず店に入ってみよう。

ウィスキー、ブランデー、ジン、ウォッカその他聞いたこともない蒸留酒がずらりと並ぶ酒飲みの天国。

種類の豊富さもさることながら、1.5リットルのお徳用巨大ボトルがぞろぞろ並んでいる。こんなん買って気が大きくなったら飲酒量ヤバくね?

そう思った瞬間、周囲がヤバヤバのアル中だらけのような気がしてきて、店の明るさ清潔さとは裏腹な緊張感が押し寄せてくる。まるでアムステルダム「飾り窓街」に迷い込んだ処女のよう。それもそのはず拙者バングラデシュへ行く以前の10年間、アメリカで蒸留酒を買ったことがなく、ABCストアなんて存在すら知らなかった。

ABCストアはバージニア州全体に400店舗近くある。ネットのレビューを見ると、店舗によっては「おっかなくて入れない」「完全にヤバイひとたちの巣窟」といった声もあるなか、わたしたちが行ったこの店は落ち着いて見回せばマトモふうな客ばかりで、店員さんも陽気だった。ひとくちにABCストアといっても地域による違いは大きいだろう。

ちなみにABCストアのある州は全米に17州。その大半は蒸留酒のみが対象だが、アルコール度の低い醸造酒にまで網をかけている州もある。最も規制の厳しいペンシルバニアでは、すべてのアルコール飲料がABCストアでしか手に入らない(レストランやバーなどは別)。これらの規制は、1933年に禁酒法が廃止されて以降もアルコール規制を求める声を受けて始まり、今日まで引き継がれてきた。

それにしてもだ、日本の製品が頑張っているのを見るのは嬉しい。ROKU JIN なんて今ではヨーロッパでもザラに見かけて珍しくもない=確固たる地位を築いている様子。

考えてみれば日本の蒸留酒は、禁酒法でアメリカの酒造りの伝統が途絶えた時期にも留まることなく切磋琢磨を続け、気づいてみれば西洋のそれにまったく引けを取らない存在にまで成長していた。

わたしの子供時代のオトナたちは、国産ウィスキーなんてまるで馬鹿にした態度で舶来ものを有難がっていた。世界に認められるようになった21世紀の国産品を見せたらなんと言うだろうか。わたしはウィスキーをあまり飲まないが、日本の一級品が世界の一級品に負けないどころか、わたしが思いつく「口当たり」といった評価基準では世界一だと思うことがよくある。ここまで言ってるんだからサントリーさんニッカさんミニボトルでいいからうちに送ってよね。

ABCストア体験のきっかけとなったカルバドス(ノルマンディ産のリンゴ酒)を賞味したところ、現地で飲んだのと違って甘くなく、舌を刺してくるほどドライだった。そのぶん混じりけなしの純粋さを感じたとかいうのは酒知らずのテキトーな感想だね。

なお、昨日から明日までは休肝日。口でいうほど飲んでません。

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