Pennyと地球あっちこっち

日米カップルの国際転勤生活 ~ ただいまラオス

パリの「ヒグマ」について

パリの日本人街で夕食をとることになり、たまたま立ち止まったところにあったメニューボードの味噌ラーメンの写真に惹かれて「ひぐま」に入店したが、結果は残念なことになった。

餃子はここが悪いというほどの欠点がない代わり、見かけも食感もいまひとつ。

ヒグマは80年代に東大卒で国鉄 → JR東海に勤めてパリ駐在員だった方が脱サラして開店したと聞く。そのころパリにラーメン店なんてほとんどなく、パリ市民にゼロからラーメンの味を教えてきた開拓者らしい。この店は日本人にも人気と聞いていたのでいささかの期待をして入店したが、わたしの好みとは反りが合わなかったようだ。

餃子のお友達にと冷や酒を注文したところ、徳利が登場して驚かされた。日本の常識とはちょっと違うがどうしたことだろうと思って周囲を見回すと、フロアを行き交う従業員に日本人と見えるひとはひとりもいない(パリの日本食屋のフロアスタッフは日本人が中心)。異文化のひとに仕事をまかせると、こういうふうに作法が変わってくるのだろうか。

まあ酒の器なんて気分の問題だから目をつぶり、美味しい味噌ラーメンさえ食わせてくれれば問題なしと思っていたところ、出てきたものはかなり微妙だった。まずスープが熱すぎて食べにくい。よく「あつあつ」と表現されるラーメンの適温は70~80℃だそうだが、ここのは90℃を超えていたかもしれない。そのためか麺はすでに伸びており、食感が悪い。

スープには(わたしたちにとっては)決定的な問題があった。まったくといっていいほど出汁がきいていない。アメリカなどの中華系の店でよく出てくる出汁ゼロの麺は食えたもんじゃないが、あれと似たようなものだった。ヒグマの味噌ラーメンは、味噌のような味のする液体、人気メニューだというキムチラーメンは、キムチと醤油が混ざったような味のする液体でしかなく、フランス人はどうだか知らないが、これを食して旨いと思う日本人がはたして存在するだろうかと首をかしげた。

厨房にいるのはどんなひとたちかと考えてみた。このレベルの質の低さは日本人以外か、そうでなければ味覚障害をわずらった日本人シェフの仕事ではないかと個人的には思った(口が悪くて申し訳ない)。ヒグマの創業者は1944年生まれと伺っており、ご存命であればすでに80歳ちかくになっておられるわけだが、今でもこの店を経営しておられるのだろうか。それともすでに引退し、どなたかに暖簾をお譲りになったのだろうか。

壁を見上げれば、来店者ののこした色紙がびっしりと貼られている。

わたしから見える範囲ではすべてが90年代のもので、左上のは俳優の故夏木陽介さんのサイン。彼はこのころパリ=ダカールラリーのドライバー/監督として盛んに活動しており、その関係でヒグマを利用したのかもしれない。その後はどんな人たちがこの店を楽しんだのかと思ったが、最新の色紙をさがして店内を歩き回るほどの好奇心を持ち合わせず、そそくさと会計をして立ち去った。そのとき対応してくれたのは日本人男性(創業者よりはずいぶん若い人に見えた)で、少なくともひとりの日本人が店におられることだけはわかった。

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