Pennyと地球あっちこっち

日米カップルの国際転勤生活 ~ ただいまラオス

財布がない! その2

ブリュッセル駅で発車寸前のパリ行き特急から急いで降りてきたら財布がなかった件の結末。

まず、事の発端となった私の財布をアントワープまで行って回収し、ふたたびブリュッセルに戻ってきた。残念なお知らせは、妻の財布についてブリュッセルの駅員に相談し、パリに向かって走行中の特急の車掌に調べてもらったが、見つからなかったこと。

だがひとつ小さな希望のともしびになったのは、カード・現金・免許証などを失くした妻のことを憐れんだ駅員ポールさんが、すでに無効になったパリ行き特急の切符について「気の毒な事情を鑑みて有効とする」旨を記したメモを自身の署名と電話番号入りで渡してくれた。

なんと優しいことか。だが、たとえ駅員ポールさんがお墨付きをくれたとはいえ、なんつーこたない紙きれの走り書きが切符に新たな命を吹き込むパワーを持つものかどうか、ハナハダ疑わしく思えてならなかった。

その一方で妻は、当初こそ財布を落としたのはパリ行き特急という前提で動き始めたものの、すぐにアントワープからブリュッセルまでのローカル線で落とした可能性についても考え、駅の遺失物係に問い合わせを入れていた。「そんじゃまあこの申告書に記入して」となって鉛筆なめなめしをし始めたとき、妻のスマホがピコーンと鳴った。

それはミシェルなんとかいう知らないひとからのフェイスブック友達リクエストだった。ピンときた妻が即座に友達承認すると、送られてきたのは妻の免許証の写メと「あなたはこの人?」というメッセージ。このミシェルさんこそが財布の拾い主だった。彼はわたしたちが乗ったローカル線の運転士で、終点駅で乗務を終え、車内の点検中に財布を見つけたのだった。

そう言われて合点がいったのは、ブリュッセルで下車するときちょっとした事情によりわたしたちはかなり急いで立ち上がった。ふだん心がけている忘れ物チェックの余裕なくバタバタと下車したのが失敗だった。幸運なことにそこは一等車で乗客がほとんどおらず、財布はミッシェルさんが巡回に来るまでひっそりと横たわっていたわけだ。

現在ミシェルさんは勤務が明けて移動中。「まもなくブリュッセル駅に着くからホームで渡すよ」という申し出どおり、ほどなく財布は妻の手に戻った。

それにしても、財布を拾った運転士がフェイスブックで電光石火のコンタクトをとってくる可能性というのはどれほどか。官僚的な手続きで遺失物係に引き継がれ、回収が翌日以降になったとしても文句はいえないところ、今回は奇跡的なスピードで解決を見ることができた。

ミシェルさんに土下座して(←ぐらいの気持ちで)お礼を言い、財布を取りもどしたわたしたちは、すぐにでもパリに向かいたかったが、問題は切符だった。駅員ポールさんのお墨付きがあるとはいえ、車掌がそれを信じてくれなければ旅は続けられない。別の駅員をつかまえて相談したところ、お墨付きに書いてあるポールさんに確認の電話を入れたうえで、「この切符有効」のシールを貼りつけ、次の特急を割り当ててくれた。

晴れてパリ行き!と喜ぶのはまだ早い。特急は全席指定で、この日の特急はすべて売り切れになっていた。立ってでもパリを目指すのか、それともブリュッセルで無駄に一泊して明日の特急に乗るのか。わたしたちは大荷物をかかえて列車に飛び乗った。幸いにしてデッキに設置されているジャンプシート(旅客機でCAさんが座るやつ)を確保することができた。1時間半足らずのことだし、なにより旅が中断されるのと比べりゃ極楽だった。

極楽で寛いでみた

かくして経済的にも日程的にもほぼノーダメージで乗り切ることができた財布事件。切符にお墨付きをくれたポールさんと、機転をきかせて連絡してきてくれたミシェルさん。ともに旅人の難儀を見過ごすことができず、精いっぱいの助力をしてくれたのだと思う。何度お礼を申し述べても足りない。

で、鋭い読者諸氏はすでにお気づきかと思うが、もしもわたしがアントワープのホテルに財布を置き忘れることなく、予定どおりパリ行き特急に乗っていたらどうなっていたか。ローカル線で妻の財布を拾ったミシェルさんから連絡をもらったとき、わたしたちはすでにパリもしくは次の目的地(ルーアン)にいたかもしれない。財布を回収するためブリュッセル往復すれば、運賃数百ドルと一日を無駄にすることになる。人生はどこに幸運がころがっているかわからない。

(この仮定をもとにわたしがマウントをとろうとしてるなんて絶対ないからね😊)

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